SSブログ

子宝草目録3-③ Bulbilliferae/ハイブリッド・フェニックス [taxonomy]

 葉縁不定芽を形成する子宝草のうち、「雑草」として多肉植物愛好家に忌み嫌われている代表例はキンチョウ(錦蝶)と不死鳥だろう。標準和名ではないので、不死鳥は漢字のままである。これを「ふじちょう」と読む人もいるが、常識的には「ふしちょう」だろう。また「鳥」の代わりにカランコエっぽく「蝶」の字を当てることもあるが、一般的には「不死鳥」と表記されている。
 少し補足すると標準和名はカタカナで表記するものだが、ごく少数の例外を除いて標準和名を持つカランコエは殆ど無いのが実態のようだ。当ブログでは標準和名がない種でも、学名のままの名前はカタカナ表記をしているので、御留意願いたい。

 不死鳥は嫌われ者なのでマニアックな多肉愛好家は目もくれない存在かも知れないが、実はなかなか難しい一群である。この植物は人為的に作出された交配種でキンチョウKalanchoe delagoensis×シコロベンケイKalanchoe daigremontianaである。元々この交配種を作ったホートンA.D. Houghtonが1935年に報告したため、長らくKalanchoe “Houghton's Hybrid”と呼ばれていたが2006年にフロリダで帰化したもの(元々米国で作出したものなので「帰化」と言っていいのかは?だが)を元にWardが新種記載した。
 この記載名がKalanchoe ×houghtoniiで、これで不死鳥に学名がついて一件落着と思っていた。ところがキンチョウ×シコロベンケイの交配種はひとつではなかったのだ。
※以前書いた記事ではこの辺を勘違いしていたので、過日【訂正追記】を入れておいた(シコロベンケイと不死鳥;http://kalanchoideae.blog.so-net.ne.jp/2014-03-08)。
 
 園芸的に出回っている子宝草を整理したShaw(2008)によると、この交配種は4倍体で稔性のあるものと3倍体で稔性のない2タイプが知られている。前者は外見がシコロベンケイに似て、後者は両親の中間型だとしている。私の知るところではもう1タイプ、キンチョウ似のものもあるので外見からは3タイプに分けられる。ここではこの3タイプに分けて整理してみる。

1.シコロベンケイタイプ
 これがWardにより記載されたK.×houghtoniiに代表されるもので、日本で一般的に見られる不死鳥に比べ、丈も葉も大型になる。私見ではここに含まれるものも幾つかある。海外のサイトでは良くこのK.×houghtoniiをシコロベンケイK. daigremontianaと混同している。
米国のナーセリーGHWで扱っている‘Jaws of Life’という品種(?)もこのタイプであるが、正直K. ×houghtoniiとの区別が良く分からない。Jaws of Lifeとは変わった名だが、これは大きなハサミやペンチのような機材のことで、事故現場にて車のドアをこじ開けたりして人命救助に活躍する。
 2014年に記載されたイベリア半島産のKalanchoe ×houghtonii‘Garbi’もこのタイプと思われる。
 もうひとつ、これらによく似るが花が異なるタイプがある。前2者の花がキンチョウに似るのに対し、これはすこし萼筒が大きくラクシフローラにも似た花を咲かせる。いずれにしろこのタイプの植物は国内では時々しか見かけない。

不死鳥よりもシコロベンケイのような葉のKalanchoe ×houghtonii
x houghtonii IMG_6678.JPG
x houghtonii IMG_0706.JPG 
‘Jaws of Life’とされる植物(上とどう違うのか?)とその花
Jaws of LifeIMG_0697.JPG
Jaws of LifeIMG_4455.JPG
Jaws of LifeIMG_3199.JPG 

2.中間タイプ
 これは一般的な不死鳥と不死鳥錦である。JacobsenがHandbook of Succulent Plants(1954,1960)でKalanchoe ×hybridaとして載せたため、“Hybrida”と呼ばれるようになったが、その本の写真をみると不死鳥よりはK. ×houghtoniiやK. roseiの変種に近い外見をしている。誤認があるのだろうが、そこに至った詳しい経緯は分からないので、ここでは一応不死鳥=“Hybrida”として扱っておく。不死鳥錦は海外では‘Pink Butterflies’という品種名で知られる。

不死鳥“Hybrida”と不死鳥錦‘Pink Butterflies’
不死鳥P5270246.JPG
不死鳥錦P5160135.JPG 

3.キンチョウタイプ
 これは(育ち方にもよるが)一見キンチョウと見まごうものであるが、K. ×houghtoniiとキンチョウの中間型のような外見である。これはほとんど見かけることがないようだ。

ある程度成長した個体(上)と若い個体(下)
BlattIMG_5565.JPG
BlattIMG_0339.JPG

タグ:不死鳥
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

温室のカランコエ;SOLSO FARM [others]

 もののついでにオシャレ系の植物売り場?に立ち寄ることが時々ある。以前にも記事で書いた様に、今日ではインテリアやオーナメントの一環として植物は欠かせないものとなっている。しかし残念なことにその手のショップや売り場には干からびたティランジアやリプサリス、徒長がひどい多肉植物が付き物だ。植物は生物であって、単なるグッズではない。物として扱う姿勢には抵抗を覚えてしまう。
 そんな中、田園都市線にある某大型書店の一角に構えたSOLSO HOMEの売り場に寄ったとき、店の人が吊り下がった着生植物にこまめに霧吹きをしているのを目撃した。ここでは植物の世話をまとも行っているのだなと感じ、本店の方も行ってみたくなった。

 今は昔のことになってしまったが、日差しの気持ち良い春の休日に川崎市にあるSOLSO FARMを訪れた。何やら週末のみオープンしているとかで、主に若い夫婦や家族連れで賑わっていた。敷地は広く、何棟もの建屋に様々な植物が展示してあり、さながら無料植物園のようであった。それもオシャレ系からマニアックなものまで種類も豊富だ。個人的に特に印象深かったのは、巨大に育ったビカクシダやティランジア、最近流行りのプロテアやディスキディア等である。
 ひと通り見物してお目当てのサボテン・多肉棟へ行くと多様な多肉植物に交じって10数種類のカランコエを見ることができた。残念ながら植物を購入することはなかったが、いずれまた訪れてみたくなるような店であった。

店の入り口付近
IMG_3866.JPG 
パリ・パリ・パリ
IMG_3914.JPG 
多肉植物棟
IMG_3959.JPG 
ファリナケアK. farinaceaの群生
IMG_3966.JPG 
美しいオルギアリスK. orgyalis
IMG_3994.JPG 
巨大に育ったファングK. beharensis‘Fang'
IMG_3972.JPG 
インテリアショップで流行りのタイプのベハレンシスK. beharensis
IMG_4003.JPG 
枝ぶりの良いアルボレスケンスK. arborescens
IMG_4008.JPG 

ベハレンシスは私個人としては置き場所の関係があって、品種レベルで手を出すのはやめておこうと思っていた。
だが記事を書いていて触発されてしまい、つい先日、吉祥寺で安価に売っていたためついつい連れ帰ってしまった。

「4ひきのねこ」さんにて
IMG_6930.JPG

nice!(1)  コメント(2) 
共通テーマ:趣味・カルチャー