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子宝草目録1-② Scandentes/黒錦蝶の葉形変異によるタイプ分け [taxonomy]

 いつも無駄な前振りが目立つ当ブログだが、この前の記事は唐突に始めてしまった。読み返すといきなりの展開で訳が分からないと思えたので、今更だが補足しておきたい。ここで試みているのは子宝草(ブリオフィルムの系統/葉縁に不定芽を形成するタイプ② 参照  http://kalanchoideae.blog.so-net.ne.jp/2016-08-14 )の可能な限りのリストアップである。それをBoiteauとAllorge-Boiteau(1995)の4グループに沿って行おうと思っている。リストアップしただけでは芸がないので、なるべく写真を載せたりしようと思っているが、内容的には薄っぺらな紹介記事に過ぎない。ともあれ、そういう趣旨でポツリポツリと続けていこうと思っている。


 さて、前回は黒錦蝶Kalanchoe beauverdiiの変種について触れたが、現在は分類学的に認められていないものばかりで、その区別も曖昧に思える。しかしながらKalanchoe beauverdii var. jueliiのように一目瞭然で葉形の異なるものは外見だけで区別できそうである。Descoings(2003)によれば黒錦蝶の葉は変化に富み、長さは1.5~11㎝、幅は0.3~4㎝(こんな幅広の葉は見たことないが…)、形状は線形、細い匙形、鉾形、卵形から楕円形、3裂の鉾状であるとしている。
 日本での呼称は「黒錦蝶」であるが葉は必ずしも黒くなく、緑色の葉を持つものが多い。国内で栽培していて冬の寒さに当たって黒ずんだりするが、基本的な色調は緑色なのではないかと思える。よく見かけるタイプは季節に関係なく黒っぽい葉であるが、原産地でもこのタイプが優勢(あるいは一般的)なのだろうか。
BoiteauとMannoni(1949)及びRauh(1995)の基変種K. beauverdii var. beauverdii(=var. typica)も葉形や色彩が不明である(正確に言うと調べきれなかった)。

 一方、別種として記載された後に本種のシノニムとされ消えた名があり、それらのタイプが元々記載されたときには葉形の違いに着目されていたようだ。Kalanchoe属としての記載とBryophyllum属としての記載、またはそれらのbeauverdiiの変種としての記載があるのでシノニムの数は多いが、まとめると次の4種の種小名に要約される。
beauverdii
juelii
costantini
scandens
  このうちbeauverdiiは本種なので抜かし、jueliiは特徴的な「3裂の鉾状」の(というより矢印のような)葉を持つので、容易に区別できる。残る二者は共にbeauverdiiより(割合として)幅広の葉をしておりscandensの原記載が入手できず詳しい区別がつけられないが、costantiniは葉が披針形とされる。となると分類学上の種としては1種で、変種も認められていないが趣味の世界(園芸上とも言える)は分けてもよいのではないだろうか。自分の見た範囲の限られた知見では、上記の4タイプは区別しておいても良さそうだ。勿論、どのタイプに入れるか迷うようなものもあるとは思うが。
 これについてはくどくど説明しても仕方ないので、幾つかサンプルを示してみる。

beauverdiiタイプ:通常のものの他に緑色で大型のものがある。
01_beauverdii.JPG

scandensタイプ:巾広の葉を持つもの。scandensは上るものの意味で、ヘクソカズラの英名でもある。
02_scandens.JPG

juelii:Hamet and Marnier-Lapostolle(1964)より
03_IMG_0600.JPG

costantini:Hamet and Marnier-Lapostolle(1964)より
04_IMG_0599.JPG

これは具体的にはこのような葉形のものであろうか。
05_scandens 2.JPG 

 ネット検索すると産地によって様々なタイプが見られるようで、非常に興味深い種である。
 特殊な葉を持つjueliiについては、次回で改めて取り上げたい。


タグ:beauverdii
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コメント 4

nate

はじめてコメントさせていただきます。多肉植物やシダを育てている大学生です。
最近K. beauverdiiを2系統入手して育て始めたことをきっかけに、つる性カランコエに興味をもち、こちらのブログにたどり着きました。
こちらで紹介されているK.beauverdiiの他の様々なタイプやK. schizophyllaなど是非育ててみたいと思い探しておりますが、知る限りの国内外のナーサリーを見ても日本に輸出してもらえないか、取り扱いがないといった感じで入手には至っていません。
もし可能であればchannaさまから購入したいと思うのですが、そういったことは可能でしょうか?
よろしくお願いいたします。

by nate (2020-01-26 20:24) 

channa

nateさん

コメ有難うございます。
気付かずにいてすみません。

さて、購入したいとの事ですが残念ながら私は植物の販売をしていなくて、動植物をお金でやり取りする気もないのです。
交換であれば、経験があります。

今からこの記事のコメント欄を情報を「受付/承認後表示」に切り替えますので、連絡先とお住いの都道府県を教えてもらえれば情報をお伝えします。

また、つる性カランコエに興味があれば、こちらの記事も御参照ください。

着生種と匍匐性種
https://kalanchoideae.blog.ss-blog.jp/2019-12-16
by channa (2020-01-28 23:04) 

channa

nateさん

すみません、コメント表示がうまく切り替え出来ないようなので、上で紹介した、

着生種と匍匐性種
https://kalanchoideae.blog.ss-blog.jp/2019-12-16

こちらに投稿お願いします。

by channa (2020-01-28 23:18) 

nate

ご返信ありがとうございます。
お持ちの植物と交換をしていただけるとのこと嬉しく思います。
私の増やしたもののうちでchannaさまのご期待に応えられるものがあるといいのですが、、ひとまず 上記の着生種と匍匐性種のリンクへコメント・住所をお送りいたしました。
ご確認のほどよろしくお願いします。
by nate (2020-01-28 23:41) 

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