SSブログ

ローズ門派の平定 その② [taxonomy]

 前回に続いてカランコエ・ロゼイ種群の謎を解き明かす論文の第2弾、Kalanchoe rosei var, variifoliaについて見ていきたい。例によって、まず論文のタイトルと掲載を紹介する。
Shtein, R. & G. F. Smith(2021)
A new status for two varieties previously included in the southern Malagasy Kalanchoe rosei, now included in K. variifolia (Crassulaceae subfam. Kalanchooideae)
Phytotaxa 496 (3): 228–244


 さて今回は前回有効であると紹介した変種K. rosei var. seyrigiiと近縁のK. rosei var. variifoliaとの関係を解き明かしていく。この2者に基変種を加え、ロゼイには3つの変種が知られるわけだが、ときに亜種として扱われる場合もある。論文ではこの辺を詳しく解いているのだが、紹介すると煩雑になり過ぎるのでここでは変種として扱っておく。もっとも、これらの種内タクサ(K. rosei var. seyrigiiはK. rosei var. serratifoliaの名称としてではあるが)を亜種から変種に変更したのはかなり以前にこのブログでも取り上げたShaw(2008)の論文で、それ自体記載としては無効なのだが取りあえず便宜上目をつぶって、とにかく3つに分けられると思って頂きたい。


 まず変種の分布について調べていくと、基変種K. rosei var. roseiはAtsimo-Andrefana、Androy北部、Anosy地区の3ヶ所で見つかっている。これらの地域は乾燥地帯からも沿岸からも離れた場所に位置している。一方、K. rosei var. seyrigiiはマダガスカル南東部沿岸のフォール・ドーファンFort-Dauphin周辺で、K. rosei var, variifoliaはその西部のブアラBeharaで採集された。


 Boiteau & Mannoni (1949)はK. rosei var. seyrigiiの原記載の記事中で、基変種以外の変種が実は交雑株なのではないかと示唆している。Shaw(2008)もまたこれらの変種は錦蝶K. tubifloraやシコロベンケイK. daigremontianaとロゼイK. roseiの交雑種という見解を表明しているが、根拠を示しているわけではなく、当時存在したブリオフィルムのHPからの受け売りでしかない。そのHPの著者は何でもハイブリッドだと言い出す人物なので(マダガスカル産の種が何故かアフリカ大陸の種の交雑種だと言ったりしている)、全く話にならない。実際に交雑種とされるリショーイK. x richaudiiは錦蝶との交雑種とされるがK. rosei var. seyrigiiと同所的に見られ、もうひとつの交雑種とされるラウイ“Rauhii”もK. rosei var. variifoliaと同所的に見つかっている。
 つまりロゼイや錦蝶といった交雑の親植物とこれらの変種を比べると親植物にある葉の表面の斑は見られず、萼筒の形も異なることから交雑種説は支持されない。さらに同所的に発見されたリショーイやラウイは、斑もあるのでこれらの変種と錦蝶の交雑種であると考えられる。


 基変種と分布が離れ、交雑説も退けた2つの変種について、ShteinとSmithはフランスやドイツのハ―バリウムにあるタイプ標本や他の標本、同時に生体標本も調べて記載文を補完した。結論として2変種がロゼイの種内タクサであるという見解は支持されなかった。そこで2変種を種に引き上げ、バリフォリアKalanchoe variifoliaとして、その種内で2変種に分けた。
・Kalanchoe variifolia var. variifolia : タイプ標本 Boiteau f. 227、エピタイプ Boiteau n 2027
・Kalanchoe variifolia var. seyrigii : レクトタイプ H. Humbert 5979 
 両者の違いを列挙するとバリフォリアは葉に帯粉せず、下葉は早めに落葉、茎は木質で樹皮があり、葉先は鈍角で葉縁の鋸歯はまばらであるのに対し、セイリギは葉にかすかな帯粉が見られ、すぐには落葉せず、茎はやや木質になるが樹皮は付かず、葉先は尖っている(というか葉先にも鋸歯がある)、そして葉縁には細かな鋸歯が密にある。
 セイリギはバリフォリアより葉も花も平均的に小型だが変異に富んでいて、論文中にも何タイプかが紹介されている。


 バリフォリアは両変種とも下垂型の花が咲き、萼筒と花筒が融合し密腺は幅の倍以下の長さである。そして葉縁不定芽を生じることからInvasores節であるとしている。本篇にはその他にもいろいろと考察を重ねているが、素人愛好家の眼から見ると専門的(マニアック)過ぎるのでここでは割愛したい。


 本篇の結論としてバリフォリアはロゼイの変種でも交雑種でもなく独立種で2変種を含み、Invasores節に属すということを踏まえておきたい。これでロゼイ・バリフォリア・ペルティゲラの整理がついた。あとはロゼイの正体と知られざるK. bouvieriとの関係を残し次の最終篇へとつながっていく。


Kalanchoe variifolia var. variifolia : 鋸歯はまばら
rosei ssp.  var. serratIMG_0809.JPG
Kalanchoe variifolia var. seyrigii : 鋸歯が細かい(この他にも別タイプが多々ある)rosei var. seyrigiIMG_4997.JPG

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。