SSブログ

癒合した萼/雙飛蝴蝶 [taxonomy]

タイトルの前半をラテン語にするとシンセパラsynsepalaである。
マダガスカル中東部から南部にかけて広く分布するいかにも多肉植物らしいカランコエである。個人的にこの種がかなり好きであるが、(未だ?)バリエーションを集めたりはしていない。カランコエ属では唯一ランナーで増える種とされる。近縁種は他にKalanchoe tetraphylla とKalanchoe berevoensisの2種が知られる。現地ではセミ・ロゼットの形状で自生しているようだが、日本で栽培していると茎も伸びてくる。我が家ではよく徒長していたりする。
 また、自生地の写真を見ると日当たりのよいガレ場のような所で良く育っているが、国内で強光下に置いておくと葉焼けしてしまう。遮光が必要な種には思えないので不思議だ。いつも失敗していてきれいな葉に育ってくれることが少ない。

 通常は葉縁に鋸歯が発達するが、これを欠くものもある。地域によって変異が見られ、最新園芸大辞典(1983)には次のような記述がある。
===引用======================================
a) 葉は白色味強く、縁辺の突起は小さい(イサロ山系産)
b) 葉はオリーブ緑色、強い歯牙縁(南部高原産)
c) 葉は緑味強く、広い歯牙縁(中部高原産)
d) 葉はオリーブ色、羽状深裂(北西部高地産)
============================================
 このうち4番目が ディセクタ(デセクタ)と呼ばれるものであろう。「オリーブ色」がちょっと引っかかるが。地域によって明確に分かれているのなら、各々亜種記載されても良さそうだ。実際記載されて後にシノニムとして消えた名も多いのだから、レビジョンを行ってそれらの名を復活させ、整理してほしいものである。

 花色は我が家にあるものは薄いピンクである。通常タイプのディセクタは白花なので、この違いに何となく面白みを感じる。シンセパラ×ディセクタという両タイプを掛け合わせた実生ものとされるものも出回っており、こちらもピンクの花が咲く。

シンセパラKalanchoe synsepala(葉縁が赤と白)とその花、およびランナー
花の写真、ちやんと撮ってなかった! 白く写ってますが本当はうっすらピンクです
synsepala01 P3010062.JPG
synsepala01 FLP1090224.JPG
synsepala01 ST PC110484.JPG  

シンセパラ×ディセクタ(シンセパラ・タイプ:葉縁が赤のみ) とその花synsepala02 IMG_1118.JPG
synsepala02 FLIMG_8657.JPG

nice!(1)  コメント(0) 

子宝草目録3-④ Bulbilliferae/レプトフィルムの迷宮 [taxonomy]

 Bulbilliferaeには一連のK. ×houghtoniiの仲間以外にもシコロベンケイK. daigremontianaと他種との交雑によると思われるものがある。私の知る範囲で3タイプあり、どれも似たようなものである。
 ひとつ目は国内ではシコロベンケイの細葉タイプと思われているが海外のマニア間ではMoullecと呼ばれるもので、この植物を発見?した人の名がそのまま俗称として使われているが、栽培品種名などはない。米国ではこの品種が導入された2001年当時シコロベンケイと何の交配種なのか憶測が飛び交い、ガストニス・ボニエリ、モルタゲィ、ヨングマンシーなどが疑われたが結果は分からず終いである。
 かなり特徴的な外見であるが不死鳥に比べて葉が長い分、不定芽の生産量が多く不死鳥以上に蔓延る傾向がある。

 ふたつ目は外見上前者と区別がつかない。実際のところどちらが本当にオリジナルなものか分からないと言っても過言ではない。そこで今ここで仮に前者をM1、後者をM2と呼ぶことにして、両者の違いは萼片の先が花筒に密着している(M1)か、外に反り返って開いた状態になっているか(M2)である。つまり花が咲かないことには区別できない。
我が家では既にM1があちこちに飛び火した後でM2を入手したため、M2を4箇所以上に増やさないように注意しているが、超過密で栽培しているため漏洩は免れない。そういう意味では栽培は容易だが、管理は難しい植物だ。

M1:シコロベンケイ細葉タイプMoullec
M1_7163.JPG 

M2:上の写真より若い個体、実際は違いが分からない
M2_7164.JPG 

M1(上)とM2(下)の花、萼に注目
M1 flower.JPG 
M2 flower.JPG 


 残るひとつはISI2007-25として紹介されたParsel Tongueだ。小包parcelではなくparsel?などと不思議に思った名だが、有名な魔法小説に出てくる言葉で「蛇語」みたいな意味らしい。ISIのHPには極端に多肉質になった個体の写真が載っており、その爬虫類のようなイメージからこの名を付けたらしいが、それならもっとましな名を付けて欲しかった。
 HPの説明ではK. ×houghtoniiの中から現れた突然変異のようなことが書いてあるが、ICNによると交配種ではなく、シコロベンケイの一品種ではないかとある。
 M1、M2との大きな違いは成長した株では葉柄が葉身に大きく食い込んで盾状葉となり、しかも葉身の基底部が漏斗状になるので特徴あるカップ状の葉を持つことである。M1、M2の方は盾状葉が現れることもあるが、基本的にはシコロベンケイの葉を細長くしたような感じである。

 これら3種は先に少し触れた長葉のシコロベンケイとは異なり、かなり細長い葉をしている。写真ではあまり実感が湧かないが、現物を見ると全く違うものである。Parsel TongueはともかくとしてM1、M2は多くの不定芽を付けることから、両親の片方はヨングマンシー等ではなくロゼイやK. ×houghtonii類なのではないかと思われる。しかし花はキンチョウに似たK. ×houghtoniiとは違い、長葉のシコロベンケイによく似る。

Parsel Tongue:M1、M2に似るがやや肉厚か
US Parsel TongueIMG_7196.JPG 


 これでBulbilliferaeも大体整理がついたが、まだ謎は多そうだ。

nice!(0)  コメント(0)