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ガストニス・ボニエリの謎 [taxonomy]

 ガストニス・ボニエリK. gastonis-bonnieriの分類と命名に関する論文が2020年のBradleya誌に掲載された。その内容を今頃やっと確認したのだが、いろいろと面白い発見があったので記録しておきたい。
 対象の論文は下記のものである。
Gideon F. Smith, Ernst Wolff, Luce Thoumin
The taxonomy and nomenclature of Kalanchoe gastonis-bonnieri Raym.-Hamet & H.Perrier (Crassulaceae subfam. Kalanchooideae), with biographical notes on Gaston Eugène Marie Bonnier (1853–1922). 
Bradleya 2020 (38), 94-103


 内容は本種の種分類的というより、研究史の中で命名法的な側面に焦点を当てて諸問題を論じている。下記に内容の一部を整理して羅列してみる。
・記載者:Raymond-Hamet & H.Perrier
・掲載誌:Annales des Sciences Naturelles, Botanique, série 9, 16: 364-366. 1912.
・タイプ:Tampoketsa, Bemarivo valley産, J.M.H.A. Perrier de la Bathie 11831(レクトタイプ)
・シノニム;
Bryophyllum gastonis-bonnieri (Raym.-Hamet & H. Perrier) Lauz.-March.
※不思議なことにBerger(1930)はBryophyllumとして発表していない。
Kalanchoe adolphi-engleri Raym.-Hamet
マダガスカル南部産がタイプ、ガストニス・ボニエリとの差は葉柄がないこととしている。
Kalanchoe gastonis-bonnieri var. ankaizinensis Boiteau & Allorge-Boiteau
基変種は開花前に萼筒が閉じているが、この変種は萼筒が開いていてパープルマークがある。
 ということであるが、パリの国立自然史博物館の植物標本にラインアップされておらず、上記の差異を踏まえてもこれを(ガストニス・ボニエリの)変種として認識するには不十分であるとしている。


 さて、変種のankaizinensisは消滅することになるのだが、園芸的には葉にまばらな斑があるタイプと密な斑があるタイプが知られていて、後者がankaizinensisであると考えられている。上記の論文によるとこの植物は(採集地は書いていないが)チンバザザTsimbazazaの植物園で栽培されていたもので、Kalanchoe ankaizinensisとして扱っていたものとしている。しかしKalanchoe ankaizinensisという呼称の有効な出版はない。原著ではここに(photos, Allorge 1994)と書かれているが「私たちが確認できる限り、「Allorge 1994」は文献の参照ではなく、栽培中の植物またはアルコールで保存されたタイプ標本のいずれかが、LucileAllorgeによって写真が撮影された日付を示しています。」と解釈していて、この標本の所在は分からないというのが結論である。


 上記に対し少し自分でも調べてみたのだが、中途半端に長くなるので少し短めだがここで一旦切り上げたいと思う。本種に興味を持つ人も少ないとは思うが、次回もガストニス・ボニエリのお話である。


乾季のガストニス・ボニエリ:国内ではなかなかこういう姿は見られない
IMG_2030.JPG

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