SSブログ

不死鳥のクラスター#3 [taxonomy]


 Shtein et. al.(2021)の論文中で不死鳥を含むホートニィKalanchoe x houghtoniiが4つのタイプに分かれると述べているので紹介しているわけだが、グズグズしているうちに3回目になってしまったので、今回で残り3タイプを一気に紹介する。


■Morphotype B
 Baldwin(1949)が不稔性とした3倍体の交配種に該当する。葉身は三角形~卵形で、他のタイプや親植物より小型である。そのため一葉当たりの不定芽生産数が少ないので、スペインでは帰化しているという情報があるもののMorphotype Aより侵略性は低い。(「他のタイプや…」と書きながら何故「Morphotype Aより」としているのかは、下記の各タイプを参照。)花色はマゼンタというよりはオレンジ色が強い。
 葉の両面や葉柄にも斑がある。若いときはシコロベンケイのように対生であるが、成長するとキンチョウのように3葉の輪生となる。


 このタイプに属する品種は不死鳥Kalanchoe x houghtonii ‘Hybrida’とその色彩変異である不死鳥錦Kalanchoe x houghtonii ‘Pink Butterflies’である。学名ではないのでシノニムとは表現しないが、リネームしたものとして‘Pink Teeth’、‘Pink Sparkler’、‘Fujicho’がある。最後のものは1998年出版の斑入植物集にて使われたものであるが、なぜ「ふしちょう」と読ませなかったのかは不明である。また‘Pink Sparkler’の名はISI 2003-32のKalanchoe ‘Hybrida’ variegatedの補遺と訂正で‘Pink Butterflies’にプライオリティがあると明記されている。


不死鳥と不死鳥錦
不死鳥IMG_5135.JPG

不死鳥錦P5160114.JPG

■Morphotype C
 線形の細い葉身で、キンチョウに似たオレンジ色の花を咲かせる。比較的若いうちから3葉の輪生となるため、キンチョウと見誤ることがある。葉の裏と葉柄に紫褐色の斑がある。
 マダガスカル南中部から西部にかけて走るOnilahy川沿いで見つかっている他、ドイツのいくつかの植物園で見られる。今のところ、他国での帰化情報はないようだ、故に侵略性も(今のところ)ない。園芸上も希少なので、特に園芸名とか栽培品種名といったものはない。


ホートニィのMorphotype C:キンチョウに似るが鋸歯が全体にある
Kindel ganzes BlattIMG_5463.JPG


■Morphotype D/Introgressed daigremontiana
 このタイプには「遺伝子移入されたシコロベンケイ」と併記されている。現状では単純な交雑種というより、過去に何らかの理由でキンチョウの遺伝子が流入したシコロベンケイと見ていることになる。この辺は将来的に明らかになっていくであろうが、現時点では形態的な考察からの判断となっている。
 葉身は細長く、シコロベンケイに似た花が咲く。葉身基部は耳状か盾状、花冠はマゼンタやオレンジではなくピンク-パープル。成熟した植物は葉が大きく、シコロベンケイと混同しやすい(シコロベンケイの長葉のものと混同するという事であろう)。対生で、輪生にはならないが、花期が近づくと互生になることがある。葉が細いので、若い個体はMorphotype Cに似る。このタイプもマダガスカルのOnilahy川流域で見つかっているが、これも今のところ海外での帰化情報はない。


 このタイプにはもう一つ、栽培植物の中から生じたとされる品種のKalanchoe ‘Parsel Tongue’ (ISI 2007-25)がある。米国カリフォルニアにあるハンチントン植物園のInternational Succulent Institute (ここは名ばかりInternationalで、海外には売ってくれなかったりする)が頒布している。特徴は漏斗状の盾状葉になること、葉の裏の斑が非常に細かい事である。これはシコロベンケイとホートニィのバッククロスかもしれない。


以上、論文の内容を駆け足で紹介したが、これで概ねの分類(というかクラスタリング)が可能になると思う。今後、一層の細かい研究が進むことを願いたい。

遺伝子移入シコロベンケイ
IMG_1608.JPG

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。