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生成AIの現時点の実力 [others]

 今の勤め先で新たな方針として、生成AIを使用した業務の効率化が挙げられた。会社ではGPT-3.5、GPT-4を使用していて、個人的にはExcelでよい関数やVBAを尋ねて重宝している。しかし一方で私の全く知らなかった情報も提供してくれることもある。例えば私の住んでいる私鉄の駅がJR東日本の埼京線にあるというようなことだ。住んでいていつの間に変わったのか全く気付かなかった。というようなパラレルワールド的な回答までしてくれる優れたものだ。
 さて、自宅のPCではBingをブラウザとして使用していて、ここでもGPTを使用できる。Microsoft Copilotというのがそれで、GPT-4とBing検索を活用して回答を生成している(と、本人が回答した)。そこでこれがどのくらいの情報を提供してくれるのか色々質問して試しているのだが、Googleに比べてBingの検索機能が劣っているように感じられるのを反映してか、あまりよくない。検索で上位に引っかかったサイトから適当に情報を持ってくるだけしかできないようだ。
以下に一例を示してみる。

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Q : 葉縁不定芽を形成するカランコエ属の植物は、全部で何種が知られていますか。

A : カランコエ属は、多肉植物の一群で、美しい葉と花を持つことで知られています。特に、その葉から発生する**不定芽(プラントレット)**は興味深いものです。
カランコエ属には数十種から百数十種が属しており、葉縁に無数の不定芽が生じるものもあります。例えば、**カランコエ・ダイグレモンティアナ(Kalanchoe daigremontiana)**は、葉縁から不定芽を形成することで知られています。この植物の葉縁由来の不定芽は、受精胚と似た形態を経て成長し、独立した根を持ちます。
カランコエは、日当たりと風通しの良い場所で育てることがおすすめです。夏には戸外で管理し、冬は室内で日光を浴びる場所に置いてください。カランコエの美しい葉と不定芽は、多肉植物愛好家にとって魅力的な存在ですね。

Q : カランコエ・ダイグレモンティアナ以外にも、葉縁不定芽を形成する種類はありますか?

A : はい、カランコエ属には葉縁から不定芽を形成する種類がいくつかあります。以下にいくつかのカランコエの種類を紹介します。
1.カランコエ・フィフィ:
ぷっくりとしたグリーンの葉が特徴で、枝が垂れ下がりながら成長します。
冬から春になると、釣鐘型をした紅色のかわいらしい花を咲かせます。
2.カランコエ・ウェンディ:
ベル型の花を咲かせる人気品種で、紅色の花先にはクリーム色の縁取りが入ります。
冬は0℃以上なら冬越しができるため、室内で南向きの窓辺などで育てるとよいです。
3.カランコエ・クィーンローズ・クララ:
バラのような八重咲きの花を咲かせます。淡いピンク色でかわいらしい雰囲気です。
1か月以上花が咲き続けるため、長く観賞が楽しめます。
4.カランコエ・プミラ:
葉が白い粉で覆われているシルバーリーフが美しい種類です。淡いピンク色の花も咲きます。
5.カランコエ・ベハレンシス:
白い毛で覆われている多肉質の葉が特徴で、波打つような大きな葉が美しいです。
白い花を咲かせるので葉と花両方の観賞が楽しめます。
これらのカランコエは、それぞれ個性的で美しい特徴を持っています。お好みの種類を見つけて、育ててみてくださいね! [クローバー][クローバー]


Q : 紹介いただいた5種のカランコエは葉縁に不定芽を形成しません。

A : 申し訳ありません、私の前回の回答に誤りがありました。カランコエ属の中で葉縁から不定芽を形成する種類は、実際には**カランコエ・ダイグレモンティアナ(Kalanchoe daigremontiana)**だけです。この植物は、葉の縁から小さな植物が成長する特異な能力を持っています。
他の紹介したカランコエは、葉縁から不定芽を形成しないことを訂正いたします。これらの種類はそれぞれ美しい葉や花を持っていますが、不定芽は別の部位から発生するものです。お詫び申し上げます。
もしさらなる質問や詳細を知りたいことがあれば、お気軽にお聞きください。

Q :いやいや、Kalanchoe pinnataやKalanchoe tubiflora、Kalanchoe sanctulaなんかも葉縁不定芽を形成しますよね。確認してみてください。

A : はい、確かにKalanchoe属の中には葉縁から不定芽を形成する種類があります。例えば、**セイロンベンケイ(Kalanchoe pinnata)**は、葉が水に浸るだけでも葉縁から根を出し子株ができて土に落下するほど生命力が旺盛です。この植物はマダガスカル原産で、日当たりと風通しの良い場所で育てるとよいです。
また、同じカランコエ属にはさまざまな種類があり、それぞれ特徴的な葉や花を持っています。カランコエは多肉植物として育てやすく、観葉植物としても人気があります。

Q : 私の質問は葉縁不定芽を形成するカランコエ属の種数でしたが、要するにあなたはこの質問に回答不可ということですね。

A : 申し訳ありません、私の前回の回答が不十分でした。カランコエ属には葉縁から不定芽を形成する種類がいくつかあります。具体的な種数については、私の知識が限られているため正確な回答はできません。もしさらなる質問や詳細を知りたいことがあれば、お気軽にお聞きください。
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?これ以上はあまりにも不毛なので割愛する。現時点では平気で嘘をつく、と言って悪ければ、誤情報も垂れ流しの状態なので当分信用に足るものにはならないだろう。自分で多くの情報を見て判断していくしかなさそうだ。


セイロンベンケイソウがInvasores節とは知らなかった、Invasoresの記載者本人も知らない情報だスクリーンショット 2024-03-03 112252.png

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暖冬の恩恵 [others]

 前年の冬季は厳寒で3ヶ月間に多くの弊害をもたらし、灼熱の夏季はこれまた多くの犠牲者を輩出した厳しい一年であった。その埋め合わせをするかのようにこの冬は暖かく、厳しい期間を乗り切った植物たちにとっては福音である。まだ安全圏に達するまでは1ヶ月半ほどあるとはいえ、今から氷点下になって氷が張ることはなさそうである(あくまで埼玉南部基準の話です)。ベランダで計っている気温の記録を見ると、6年振りに氷の張らない冬となる見込みだ。むしろ急な気温上昇と日射により、ベランダに置いているフレームのビニールシート内で高温障害にならないか心配である。これはこれで過去にも大きな犠牲を輩出したのではあるが、絶対的な低温のリスクと比べればまだ対処のしようはある。


 暖冬のおかげで今季は様々な花が比較的早めに咲いた。いくつかは交配を試みていて、いずれ結果についても書いてみたいと思う。何しろビニールの中で真冬に開花するので、虫媒は望めないから手作業である。ビニールも全開には出来ないし、近年視力もかなり下がったので効率悪いことこの上ない。とはいえ、花は咲いてくれること自体で楽しい、うれしい、面白いと3拍子揃っているので、見ているだけでも結構満足できる。この辺の割り切りは、年を取ったことの利点であろうか。
 花が咲いて「面白い」というのはどういう感覚かというと、Bryophyllum亜属というかInvasores節に限ったことかもしれないが、萼筒と花筒の形や比率からその植物がどの系統に近いかとか、交雑種であればどの親の形質が強く表れているのかといった興味を刺激したり満たしたりしてくれるということだ。最近は野生交雑種だけでなく人工交配したものも多く、花を見るのが面白いと感じる次第である。


我が家では今年初めて咲いたK. beauverdiiと黄花のK. miniata
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様々な交配株も開花している
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 暖冬の恩恵は寒さのリスク軽減と早期の開花が主であるが、その他にもこの時期に入手できる下垂型の花卉が比較的安全に育つということも挙げられる。子宝草以外にも下垂型花卉とか欠刻葉の種、一部の木本性種が個人的に好きなのだが、下垂型花卉は昨年の夏にほぼ全滅してしまったので、今年からまた徐々に入手することにした。といいつつ今年の1-3月は個人的な都合であまり活動できないので、近隣の花屋を回る程度なのだがなかなか楽しかった。
近くでも収穫はあった
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こんな切り花も発見
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 おまけに暖冬の影響でいつもの冬には滅びてしまう路上のキンチョウK. tubifloraも今季は健在だった。亜熱帯ではないのでこのまま増え続けても次の冬には滅びてしまい、本土で帰化しないため安心して楽しめる。
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かように(植物趣味に限っては)今季は幸せな冬を過ごしているが、それでもやはり春は待ち遠しい

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熱波到来!! 燃える世界 [others]

 近年月に1度しか更新していないとはいえ、今月でこのブログも10年経った。思えば植物のことは何も知らなかったが、カランコエだけは詳しくなった。ことカランコエに関しては市販の雑誌・書籍が当てにならないので原記載をはじめとした論文に当たるようになったし、自生地も訪れて彼らの生きている環境を(少しだけ)知った。未だ興味は尽きないので、今から新たな10年に一歩踏み出したい。


 そんな10年の節目というには皮肉だが、今年は先に記事でも書いたように10年に一度の寒波で植物たちは大過を被った。ディンクラゲイ、ミロティ、アルボレスケンス、フミフィカのダメージが大きかったことは先般既に報告したが、それまでの経験からするとセイタカベンケイ、ガストニス・ボニエリ、ミニアータ等も寒さには弱い。他のホビィストからの情報ではボグネリやヴィギエリもセンシティブとのことだが、我が家ではダメージは負うものの何とか持ちこたえている。
 この冬は10年一度の厳冬ということであったが、その反動か今年は夏もひどかった。冬が「結晶世界」だったから夏は「燃える世界」である。(って通じないな。。。) 思い返すと1994年頃だったと思うが、2ヶ月間35℃超えの猛暑日が続いたことがあった。そのときはカランコエの趣味はなかったので被害はなく、個人的に食欲が増進した程度であった。しかし、今年の夏は6月20日過ぎから既にベランダの気温は35℃を超し、8月初めに落ち着きを取り戻すかに見えたが、淡い期待は瞬く間に裏切られて35℃超えの日は9月20日過ぎまで続いた。30年前の記録を易々と塗り替え、3ヶ月間も猛暑日に見舞われたわけである。


 というような過酷な夏には犠牲者が付き物、というか被害が出ないわけがない。着生種をはじめとする下垂型の花が咲く花卉はほぼ壊滅状態になってしまった。気温が30℃を超えそうな日は室内に取り込んで、直射日光に当てないようにするなど頑張っていたが、努力むなしく悲惨な結果に終わった。
 今までの経験からして、原種で暑さへの耐性が最も弱かったのはベルガリK. bergeriと2種のKitchingia亜属、グラキリペスとペルタータである。そして下垂型花卉のウニフローラやシャンデリア、ウェンディ、サニーバルーンなども弱い部類だ。この手のものでも匍匐性のマンギニーを掛け合わせたミラベラやハッピーベルなどは耐暑性が高い。逆に暑さには強そうなクレナータは意外と暑さに弱く、猛暑日にはしなだれてしまうが、果たして何年も前の熱い夏の日に帰らぬ存在となった。


暑さに最も弱かったのはベルガリK. bergeri
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意外にも弱かったクレナータ K. crenata
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 そして今年の夏である。グラキリペスの死滅はいうまでもなく、ウェンディとまさかのシャンデリア・オレンジレッドとハッピーベル(ピンク花)も死滅。「死滅」というのは全滅してしまったという意味で、このほかにもマンギニー、シャンデリア・パープルレッド、エンゼルランプもそれぞれ小さな芽を一つ残すのみで、壊滅状態(絶滅寸前)となった。エンゼルランプとハッピーベルは再入手困難なのでショックが大きい。特にエンゼルランプはこの9年半、暑さ寒さを比較的順調に乗り越えていて、毎年花も咲かせてくれていたので相当に鬱な気分になった。ウニフローラも絶滅危惧にまで陥ったが、幸い少し生き残った茎を挿しておいて、芽吹き始めている。結局かろうじて生き延びたのはミラベラだけであった。
 下垂型花卉以外では一部の個体を失った種・品種は多々あるものの、ボヌールのピンク花やプミラはすべて失ってしまった(死滅)。が、何といっても最大の痛手は今まで死滅どころか壊滅すら想像だにしなかったラクシフローラ・ヴィオラケアが死滅してしまったことだ。美しい品種なので、またいつか入手できる機会を待ちたい。
 全滅しないまでもヨングマンシーとスキゾフィラも結構なダメージで壊滅に準ずる。今年の短い秋に立て直しを図ったが、もう既に(カランコエにとっての)冬が始まってしまった。毎年11/23にはフレームにビニールをかけている。長い冬の到来だ。


23/8/20には既にほとんどの下垂型花卉が大きなダメージを受けていた
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そして1ヶ月後、ほぼ壊滅状態に(現在はもっと悲惨)
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 これらの被害の中で、いくつかは私がもう少し早く異変に気付いて処置すれば救えただろう (実際、救えたものもあるわけですよ。) 。それを思うと非常に悔やまれる。今回、10年の節目なのに読んでいる側には何も面白くない記事を書いてしまった。しかし所期の目的である忘備録として記録せずにはいられない年だったので、懺悔を兼ねて記した次第である。

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所は何処、シコロベンケイ [others]

 前回は一般的な種であるシコロベンケイKalanchoe daigremontianaが野生植物としては絶滅危惧種であったという、たいていの人にはどうでも良いが一部の人間にとっては衝撃的な内容の頭出しをした。また文献と標本から知られる採集地は下記の5ヶ所であり、このうち最後のIsaloとMakayは山地であるため、具体的な地名としては3ヶ所しかないということを述べた。
Mont Androhibolava (Onilahy)
Marosavoha (Onilahy)
Fiherena(na) river 
Isalo
Makay


 では具体的にその産地について見てみよう。前回述べたように具体的な産地名としては3ヶ所が知られている。しかし現在の地図上では正確な位置を知るのは難しく、仕方ないので大体の場所を地図にプロットしてみると、下記のようになる。地図の下半分を横切っているのがオニラヒOnilahy川で、シコロベンケイはトリアラからオニラヒ川流域に分布しているようである。実は前回の紹介論文の最後に、編集者がSaint Augustin近くと更にオニラヒ川上流40Kmの地点でシコロベンケイを発見したとの短報が付加されていた。いずれにしろトリアラからオニラヒ川流域であることには違いない。


【オニラヒ川流域の自生地】
 daigremontiana localities.png

 続けて記事ではIUCNのレッドリストの記述を紹介し、それによるとシコロベンケイがマダガスカルの固有種でトリアラ州 (Atsimo Andrefana 地域) の海抜 200 ~ 315 m の間、Fiherenana 川渓谷とベネニトラ周辺でのみ知られる。 そしてこの種には 3 つの亜集団が知られている「絶滅危惧種」と考えられているとある。 また最新の採集は1928年にHumbert & Swingle によるFiherenana渓谷の近くで、それ以来野生で採集されていないとしている。この記述は少し大げさなのだが、現在世界で栽培されているもののルーツがHumbert & Swingleが1928年に持ち帰ったものというのは定説のようである。


 さてその後記事ではイサルISALOでの分布について、キンチョウやクローンコエとシコロベンケイの分布が重なっていると書いている。イサルにキンチョウが自生しているかいないかはよく分からないが、クローンコエのルーツがイサルであることは、アンツカイ樹林公園長であった故Herman Germain Petignat氏の情報で知られている。しかしここにシコロベンケイも分布しているかというと、原記載以外に記録はない。このCristini(2020)の記事の翌年出た論文Shtein et. al.(2021)によると、Perrier de la Bâthieが当時知られていなかったクローンコエとシコロベンケイを混同した可能性も否定できないとしている。勿論、実際にシコロベンケイが見つかった可能性も皆無ではないが、イサルはオニラヒ川の自生地から北方100Km離れており、またマカイMakayの南方150Kmに位置している。これだけ離れた場所に自生していなくてもおかしくはない。


【シコロベンケイ原記載にある自生地の位置関係】
daigremontiana 位置関係.png 

 しかし上記を読んでマカイMakayからもオニラヒ川からも離れているからイサルの分布はおかしい、という論調は変だと気付く人も多いだろう。マカイとオニラヒ川流域でシコロベンケイが見つかっているとすれば、相当広域分布しているということであってその間に位置するイサルの分布がおかしいということにはならないであろう、と考えられるからだ。実はここにShtein et. al.(2021)で触れられていない陥穽がある。その少し前に出版された論文(Smith & Shtein, 2021 : https://doi.org/10.11646/phytotaxa.494.2.8)にて本文でこそ明確に述べられていないものの、予告編的にマカイのシコロベンケイが別ものではないかということが示唆されている(ように思える)。かなり微妙な言い回しだが、その点は汲んでほしい


 さて、結論としてシコロベンケイはマダガスカルでは限られた場所からしか知られていない絶滅危惧種で、その分布として確かなのはトリアラ周辺からオニラヒ川流域ということである。今現在各国で見られるのは、まずほとんどがトリアラの北に位置するFiherenana川で採集された個体の子孫である。そしてその個体群のものは(これは私の個人的な感想であるが、)オニラヒ川流域のものとは若干違いがあるように思える。


一般的にみられるシコロベンケイ
コダカラベンケイIMG_3214.JPG
オニラヒ川流域タイプ
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シコロベンケイのバラード [others]

 「嘘も100回言えば真実となる」法則はこの3年間の経験でよく理解できたと思うが、カランコエの世界でもそれより以前から間違いがまかり通っている。当ブログでも何度となく皮肉っている例で言うと、シコロベンケイの標準和名がコダカラベンケイソウなのだが、子宝草Kalanchoe laetivirensのことをコダカラベンケイソウと呼ぶことが多発するに及び誤認が定着してしまった。甚だしくは娘が中学生の時の教科書にも子宝草がコダカラベンケイソウとして扱われていたし、NHKの植物番組でも専門家の先生が思い切り間違っていた。こんな初歩的なことも巷では間違って流布されている現状がある。


さて、話は変わって、ペットとして人気のあるゴールデンハムスターは学術的に捕獲されたことは数度しかなく、現在飼育されているものは1930年に捕獲されたものの子孫である。生息地のシリアが危険な地域のため、野生個体群の研究が進んでいないとされる。またアホロートル(アンビストマ科の幼生成熟個体)の形態でよく売られているメキシコサラマンダーAmbystoma mexicanumも元の生息地であるメキシコのソチミルコ湖はほとんど消失してしまい、残った湿地や河川に細々と残っている程度だという。故にワシントン条約発足当初から付属書Ⅱにリストアップされていた。
 要するに何が言いたいかというと、絶滅危惧種が飼育下ではごく一般的なものだったりする事象があるということだ。シコロベンケイKalanchoe daigremontianaもそんな例のひとつである。オーストラリアや合衆国(の一部)、南アフリカをはじめとする世界各地の温暖な地域に帰化しているとはいえ、天然分布のマダガスカルでは絶滅危惧種とされているのだ。もっとも園芸の世界でも本来の和名のコダカラベンケイソウという名称共々クローンコエに取って代わられ、やはり絶滅危惧なのかもしれない。欧米もことは同じで姿の似たホートニィのMorphotype Aにすり替えられている最中である。


 多肉植物にやや詳しい人は誰でも知っているシコロベンケイではあるが、マダガスカルのどこに自生しているのかまで把握している人は少ないようだ。そんな疑問に答える記事がこちらである。
Cristini, M., 2020. The distribution of Kalanchoe daigremontiana Raym.-Hamet & H.Perrier in Madagascar. CactusWorld 38 (4): 309–313.
 British Cactus and Succulent Societyの会誌に載ったこの記事は、知られざるシコロベンケイの故郷について文献的な考察を述べたものである。内容をざっくり紹介してみたい。

シコロベンケイの原記載であるHamet, R & Perrier de la Bâthie (1914)には産地として4つの地名が上がっている。
Mont Androhibolava (Onilahy)
Marosavoha (Onilahy)
Isalo
Makay


実際に原記載を確認すると確かに4ヶ所連記してある
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 次にマダガスカルの子宝草研究には欠かせない Boiteau & Mannoni(1949)には
Fiherena(na) river 
の名があり、ここでは1924年にPerrierが、1928年にはHumbert & Swingleが本種を採集している。カランコエ研究の定番Boiteau & Allorge-Boiteau (1995)には上記のほかに「南西部の他地域」とあるが具体的な採集地の名はない。
 各々の地名のうちMont Androhibolava とMarosavohaは、別の植物の採集地として他文献にも載っているが微妙にスペルが異なっており、1901年と1954年の地図を参考に確認している。Fiherenana riverはRauh(1998)にも載っているが、本書はシコロとクローンコエを同一視しているので不確かである。IsaloとMakayは山地の名なので、地名としては以上の3地点しか知られていないのが実態である。


というわけでCristini(2020)ではこのあとも話は続き、さらにその後の別の論文で補完と反論があるのだが、今回はシコロベンケイの産地がこれしか知られていなかったという事実だけ認識して次回につなげたい。

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