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子宝草目録4-② Proliferae/似て非なる関係 [taxonomy]

 この仲間でガストニス・ボニエリ以外に有名なのはセイタカベンケイKalanchoe suarezensisである。この和名が適切か否かは別として、以前帰化植物の記事で述べたように沖縄で帰化している。この種が売られていることは稀であるが、何やかんやと入手経路があるのだろう、時々民家の庭や軒先に置いてあるのを見かける。 
 原産地はマダガスカル北部で、種小名はアンツィラナナAntsirananaの旧名ディエゴ・スアレスDiego-Suárezに因むと思われる。ガストニス・ボニエリから斑を抜いたような植物であるが、時々細かな斑が現れることがある。頂芽が薄く帯粉する場合もあり、葉はガストニス・ボニエリよりも薄い。
驚くべきは不定芽の生成能力で、葉の切片からでも葉縁の鋸歯の窪みから発芽・発根する。小さな株でもガストニス・ボニエリのように(主として)葉の先端からのみ発芽するのではなく、何か所も不定芽が生じる。

セイタカベンケイことKalanchoe suarezensis
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葉に細かな斑が現れることもある 
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葉に生成された不定芽
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葉の切片からも不定芽を生じる
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 Proliferaeに属する植物の中には後々述べるつもりのプロリフェラKalanchoe proliferaのように、夏季は普通の植物並みに葉が薄くなり、冬季には多肉になるタイプの植物がある。昨年ある業者さんから通販でガストニス・ボニエリとして購入した植物が、このような性質を持っていた。一見セイタカベンケイによく似るが微妙に異なる。欧州の愛好家はこれもセイタカベンケイKalanchoe suarezensisとして扱っているようである。夏は普通のセイタカベンケイよりも葉が薄く、細長い。冬にはガストニス・ボニエリほども帯粉して鋸歯もセイタカベンケイとは異なる。開花しないことには何とも言えないが、取りあえず別物(別種・別変種・別品種など)として扱っておきたい。

Kalanchoe suarezensisの1タイプか?
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冬季はこのように肉厚である
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 ガストニス・ボニエリやセイタカベンケイの仲間にはもう1種、Kalanchoe mortageiが知られている。これはセイタカベンケイによく似た植物と思われ、分布域もほぼ同じマダガスカル北部産だが、こちらは超レアものらしい。ネット検索してもセイタカベンケイを誤同定した画像しか引っかかってこない。
 まずいことに日頃当てにしているBoiteau et Allorge-Boiteau(1995)も Descoings(2003)もこのKalanchoe mortageiの記載に不備があってあまり参考にならない。Descoings(2003)をそのまま踏襲しているICNのサイトも参考にはなるが、信じ切るのも怖い。あやふやながらも両者の違いはというと、セイタカベンケイの萼筒は赤みが強く、花筒は黄色みが強いのに対し、Kalanchoe mortageiの萼筒は赤みがかった黄や緑で、花筒はピンクがかる。そして葉はセイタカベンケイでは披針形で、Kalanchoe mortageiは基部が心形cordateまたは耳型auriculateである。もっとも若い(小さな)個体では顕著でなく分かりにくいものと思われる。

貴重なKalanchoe mortageiの写真:Hamet and Marnier-Lapostolle(1964)より
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子宝草目録4-① Proliferae/先端のプラントレット [taxonomy]

 さて子宝草紹介シリーズも大詰めを迎え、最後のグループProliferaeである。このグループは大きく分けてガストニス・ボニエリの仲間とセイロンベンケイソウの仲間に分かれ、その他若干の種が知られる。

例によって、構成種を変種レベルで列挙する。(現在無効とされる変種を含む)
・Kalanchoe gastonis-bonnieri
  Kalanchoe gastonis-bonnieri var. gastonis-bonnieri
  Kalanchoe gastonis-bonnieri var. ankaizinensis
・Kalanchoe suarezensis
・Kalanchoe mortagei
・Kalanchoe bogneri
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・Kalanchoe pinnata
  Kalanchoe pinnata var. pinnata
  Kalanchoe pinnata var. calcicola
  Kalanchoe pinnata var. brevicalyx
・Kalanchoe prolifera
・Kalanchoe rubella
・Kalanchoe curvula
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・Kalanchoe macrochlamys
・Kalanchoe maromokotrensis
・Kalanchoe humifica

 今回はガストニス・ボニエリの仲間について見てみる。4種が知られ、大型になる。少なくともガストニス・ボニエリKalanchoe gastonis-bonnieriとセイタカベンケイKalanchoe suarezensisの大型個体では葉の長さは30cmを超える。他の種も記載されているよりは大きくなるのではないだろうか。
この仲間のうち1993年に新種記載されたマダガスカル中西部のKalanchoe bogneriは葉縁不定芽を生じないとされており、故に私は興味を抱かず入手しなかった。現在は入手困難になってしまい、後悔している。というのも本当に不定芽が出来ないのか、その後の情報がなく、もしかすると不定芽を生じるかもしれないからである。あとから不定芽形成が判明した事例が他種で知られている。

一般的なのはガストニス・ボニエリで、種小名のgastonis-bonnieriはフランスの植物学者Gaston Eugene Marie Bonnierにちなんでいる。この種は主として細長い葉の先端に親と同じ形の小さな不定芽が付く。大きな個体では鋸歯にも不定芽が生じるが、比較的稀である。マダガスカルの北西部原産のため寒さには比較的弱く、冬に枯らせてしまったことが何度かある。米国フロリダ州から中南米にかけて帰化している。
 「雷鳥」と呼ばれることもあるが俗名であろうか、正式な和名ではない。葉の繊細な縞模様をライチョウの羽に見立てたものと思うが、このタイプは変種のKalanchoe gastonis-bonnieri var. ankaizinensisである。この変種は日本や台湾、ドイツで主に栽培され、その他欧米諸国では基変種のKalanchoe gastonis-bonnieri var. gastonis-bonnieriが栽培されている。

 基変種は葉の斑紋が少なく、開花前の萼が赤く染まる。学名でネット検索するとたいていはこちらが出てくる。K. gastonis-bonnieri var. ankaizinensisに比べて斑が少ないが、ときになかなか美しい斑が出るものもある。国内ではほとんど見かけないが、以前池袋の百貨店(といっても多肉マニアの皆さんが集まる場所ではないが)で大型個体を見かけた。

 唐印やプミラのような粉ものは個人的に栽培が苦手だったが、最近ガストニス・ボニエリだけは上手くいっている。若い葉は斑紋が全く見えないくらいカルシウムの分泌物で真っ白になっているが、この様子もまた美しい。

一般的なガストニス・ボニエリKalanchoe gastonis-bonnieri var. ankaizinensis
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花も美しい
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粉で真っ白な若い葉
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斑の少ない基変種Kalanchoe gastonis-bonnieri var. gastonis-bonnieri
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模様がはっきりした状態
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