2021年記載種総括

　少し前に「カランコエとブリオフィルム⑦　ハーフウェイ・システマティックス」という記事を書いて、今年はカランコエ属下位分類が激動の年であったことを紹介したが、新種記載もまた続々となされた。新種記載された種はInternational Crassulaceae NetworkのHPでRecent Updatesをチェックしていると分かるのだが、ここには新規記載種だけでなく学名が変更となったもの（先日紹介したK. humilis→K. prasinaのようなパターン）も含まれている。そこまで手を広げると収拾がつかなくなるので、ここでは新種記載されたものだけ取り上げたい。個人的なメモとも言えるが、もとより世界中の学術雑誌を網羅して監視しているわけではないので、目についたものだけである。動物分類学だとZoological Recordで探るのが定番なのだが、植物ではIndex Kewensisとかなのかな？（未だに門外漢っぽさが抜けずによく分かってないです。）

　個人的にBradleya、Candollea、Phytotaxaの3誌をチェックしていたが、Bradleyaは新種記載なし、Haseltoniaに1件、Phytotaxaに多数載っていたので、亜属別に見ていきたい。先日の記事で、カランコエ属の亜属がKalanchoe・Bryophyllum・Kitchingia・Fernandesiae・Alataeの5亜属と紹介したが、Kitchingia・Alataの両亜属には新種記載がなかった。

■Kalanchoe亜属

・Kalanchoe darainensis： Klein, D.-P. et. al, Candollea 76(1)

マダガスカル産、花ものカランコエの原種Kalanchoe blossfeldianaの近縁種

■Fernandesiae亜属

・Kalanchoe × leistneri：Smith, G F., Phytotaxa 509(2)

 南アフリカ産、これはKalanchoe属との雑種Nothospeciesで親植物は

 K. sexangularis × K. winteriの交配とされる

・Kalanchoe benbothae：Smith, G F. & N.R.Crouch, Phytotaxa 521(2)

南アフリカ産、他のFernandesiae亜属と同様に唐印タイプの植物

■Bryophyllum亜属

・Kalanchoe beauverdii var. pertinax：Shtein, R. & Gideon F.Sm., Phytotaxa 482(2)

・Kalanchoe costantini var. unguifera：Shtein, R. & Gideon F.Sm., Phytotaxa 482(2)

・Kalanchoe guignardii var. schistosepala：Shtein, R. & Gideon F.Sm., Phytotaxa 482(2)

 マダガスカル産、上記の3変種はKalanchoe beauverdiiのレビジョンが発表され

 新規に変種記載されたもの（この論文の内容はいずれ整理して紹介したい）

・Kalanchoe torrejacqii：Shtein, R. & Gideon F.Sm., Phytotaxa 498(3)

マダガスカル産、K. laxifloraやK. fedtschenkoiに似たタイプの植物

・Kalanchoe perrieri：Shtein, R. et. al., Phytotaxa 502(3)

マダガスカル産、従来K. roseiと誤認されていたもの

・Kalanchoe × descoingsi：Shtein, R. et. al., Phytotaxa 524(4)

マダガスカル産、子宝草タイプの雑種Nothospecies

　以上のようにBryophyllum亜属の新種記載が多くなされ、しかも全て本ブログで言うところの子宝草である。マニアとしては嬉しいような頭が痛いような複雑な思いがあるが、一つ言えることは以前書いた「子宝草目録」を大幅に書き直す必要があるということだ。来年はネタの尽きない年になる事決定である。

本邦初公開!? Kalanchoe torrejacqii