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カランコエとブリオフィルム⑦ ハーフウェイ・システマティックス [systematics]

 2年前(2019.11)カランコエとブリオフィルムの6番目の記事を書いたが、最近になってその後の展開があった。まだ進行中で二転三転しそうなのだが、いつまで待つと一段落つくのか分からないので今回は中間報告的な内容となる。また、下手に詳しく紹介すると後々かなりの混乱を招く恐れがあるので、簡易な報告としたい。
 前回の紹介論文(Smith et Figueiredo, 2018)以降にSmithを中心とした論文が幾つか出版されており、カランコエ属の下位分類が大きく変化しつつある。今回の紹介は2021年7月時点での状況である。


 今まで当ブログではカランコエ属の下位に3節Section(Kalanchoe・Bryophyllum・Kitchingia)があると説明してきた。一方この3者を亜属Subgenusとする説があり、先のSmith et Figueiredo(2018)は亜属としていた。その論文を紹介した際、「それらの分類群がなぜ節Sectionではなく亜属Subgenusなのかという見解は書かれていない。本ブログでは今後これらの下位分類群を今まで通り節として扱うべきか、亜属に変えるか態度を決めかねてしまう。」と書いて、その後も「節」を使用していた。
 今年に入ってBryophyllumの分類に関する論文が立て続けに出版され、細分化されたクラスタは従来のようにBryophyllumを節Sectionとした場合、下位の分類単位が足りなくなってしまった。勿論これは人間側の都合で、整理した階層に合わせて亜属か節を採用した結果と言える。そんな事ではあるのだが、当ブログでも今後は今まで節としてきた分類単位を亜属として扱っていこうと思う。


 さて、7月現在、カランコエ属は従来の3亜属に加えてFernandesiae (Smith, 2020)と Alatae (Smith et al., 2021)を加えた5亜属に分かれている。そして少なくともBryophyllum亜属は幾つかの節に分かれるように思われるが、現在発表されているのはInvasores節(Shtein et Smith, 2021)だけである。Invasores節の構成はBoiteau and Allorge-Boiteau(1995)のグループで言うとScandentes・Bulbilliferae・Suffrutescentesを含む。残念ながら今はこの節についての断片的な発表のみで、まだBryophyllum亜属の下位分類についての全貌はつかめない。私の好きな子宝草にしてもセイロンベンケイソウ類の節は未発表である。Invasores節に含まれる3グループでは、Scandentesに相当するVilana列Seriesのみ記載されている。Vilana列の構成種はほぼScandentesに近いが、スキゾフィラK. schizophyllaは外れている。そもそもこの種は葉縁で子作りしないので子宝草とは言えないし、花の形態も異質なので妥当な結論だと思う。


子宝草の仲間ではなくなったスキゾフィラK. schizophylla
schizophyllaIMG_0165.JPG


 一方Kitchingia亜属についても別の論文(Smith et al., 2021)にてレビジョンが出版されており、これにはBoiteau and Allorge-Boiteau(1995)のグループSylvaticaeの2種のみが含まれることになった。従来のもう2種が含まれるグループCampanulataeは別亜属になるのだろうが、現時点での所属は明らかにされていない。Boiteau and Allorge-Boiteau(1995)の時点でKitchingia亜属(文献中ではKitchingia節として扱われている)の特徴は心皮が4開裂することであったが、今回の論文ではそれに加えて花序に不定芽を形成しないことも特性とされた。


Kitchingia亜属の代表グラキリペスK.gracilipes
gracilipes sunrise IMG_8864.JPG

 今後も目が離せない展開が待っていそうで、今年は子宝草マニアにとってエポック・メイキングな年である。

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