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グランディディエリの葉形 [taxonomy]

 相変わらずTVでは専門家と称してウイルス学者でない人が根拠を示さずにウイルスを語り、あるウイルスが特殊で格別に恐ろしいものであるという情報操作が続いている。ある特集番組では、今流行りのウイルスがORF3bという抗IFN因子を持っていてインターフェロンの発動抑制を行うということが、さもこのウイルス特有の特別な能力であるかのように印象付けていた。しかし実際は他のCoVにもORF3bはあるし、方法は違えど多くのヒトに病原性があるウイルスがインターフェロンの情報伝達系を抑制していることは知られている。ちょっとwebを漁れば分かる事なのに、本当に(上級でない)一般国民をバカにしてくれるものだ。
 人が分からないと思って適当なことを言うのは好きではない。本ブログでは適当な俗説に対して批判的なことを書いているが、今は世の中全体に似非情報が蔓延しているのでついつい愚痴りたくなる。カランコエについて適当な情報が広まっても実害はないが、今の騒ぎは流石に放っておく気にもなれないので、御容赦願いたい。

 さて、今回は「限られた情報でイメージを固めない」ようにグランディディエリの紹介をしたい。
 フランスの自然主義者で探検家のアルフレッド・グランディジェAlfred Grandidierの名を冠したグランディディエリKalanchoe grandidieri(本当はグランディジェリかな)は、マダガスカル南西部に産する木本性カランコエである。この種には基変種Kalanchoe grandidieri var. grandidieri とKalanchoe grandidieri var. itampolensisの2変種が知られる。両者の区別は難しく、葉を見ただけでは分からない。基変種のgrandidieriは花序が分岐しないが、itampolensisの花序はよく分岐して長く伸び、多くの花のついた集散花序を形成する。つまりは花序が伸びてこないことには区別できない。
 双方とも石灰質の地質を好み、マダガスカル南西部の海岸近くの斜面等で見られる。日本では佐藤(2004)の「世界の多肉植物」や国際多肉植物協会(2004)の「多肉植物写真集」に載っているので写真を見たことがある人も多いだろう。しかしそれらの写真でイメージが定着すると、実際のグランディディエリの葉形の多様性が認識されないと思われるので、簡単ではあるが幾つかの例を紹介したいと思う。

 葉形は変種の区別を無視して、大きく4つに分けられる。楕円形・槍形・刀形・針形の4つで、針形で葉の多い個体は、一見して何の種か分からないほどだ。なお、この4つの形名は私が勝手につけたもので、実際には写真に示すように明確に分けられないものもあり、断続的な変化が見られるようだ。ネーミングはともかく、葉形は随分多様なのだと認識頂ければ幸いだ。

葉形①楕円形
1 IMG_3424.JPG
1 IMG_2906.JPG
葉形②槍形
2 IMG_2812.JPG
葉形③刀形
3 IMG_2787.JPG
葉形④針形
4 IMG_3092.JPG
葉形③と④の中間型
3-4 IMG_2909.JPG

 樹高3mになると言われるが成長は大変遅いようで、いったいどれほどの年月を経て2~3m級になるのだろうか。もしバオバブ並みに遅かったら、若いうちから一生かけて育ててもままならない。我が家の小さな苗も娘や将来の子孫に引き継ぐことになるのであろうか。もっとも気温の変化に敏感ですぐに葉がしなびて枯れてしまうため、栽培は難しい。1年中大きな温室に入れておける人向きの種である。

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