温室のカランコエ;新宿御苑/経過観察あるいは定期巡回 [others]
4月に2年振りに新宿御苑を訪れてみた。2年前と比べて外国人観光客の比率は一層増加していた。欧米人も多いがアジア人も多く、日本の花見の風習が有名になったのと関係がありそうだ。
かくいう私も花見に行ったのだが、それは表の楽しみで裏の楽しみは温室である。2年前には3m級の仙女の舞と月兎耳の他、特別室にリュウキュウベンケイソウが幾鉢かあった。それらはどうなっているであろう。
今回はというと、温室入り口近くに「絶滅危惧の植物」と題してリュウキュウベンケイソウの開花株が一鉢置かれていた。特別室には一鉢も見当たらなかったので、現在は別棟で栽培しているのだろう。ということは、開花時期に来なかったら見られなかったかもしれない。絶滅危惧というだけで、花のないリュウキュウベンケイソウは展示してくれないような気がする。
今回はかなりラッキーであった。何しろ特別室のようなガラス越しではなく、鉢はむき出しで置かれていたのだ。写真撮り放題である。思わずまとわりつくようにして、かなりの枚数を撮ってしまった。咲いている花には5花弁のものもあった。
以前も書いたことがあるが、何故かリュウキュウベンケイソウ(沖縄産)には5花弁の花が良く見られる。御苑のリーフレットに載っている写真も5花弁だ。ネット上にも5花弁が多く見られる。しかし、国外の個体では通常の4花弁ばかりである。
沖縄産も一つの花序に咲いている花の全部が全部5花弁ではないので、たまたまそういう遺伝子を持った個体から無性生殖で増やした個体を各地の植物園に分配した結果なのか、もともと沖縄の個体群に見られる特徴なのか。
1982年の「日本の野生植物 草本Ⅱ」(平凡社)では花弁は4倍性との記載だが、ちゅら海財団によるリュウキュウベンケイソウの一連の研究報告書の写真には5花弁の花が映っている。5花弁の遺伝子を持った個体からの拡散という前者の可能性の方が高いかも知れない。
ついでながら御苑のネームプレートでは本種の学名がKalanchoe integraになっているが、現在はKalanchoe spathulataである。以前来たときは、絶命危惧種の説明パネルがあり、そこの学名はK. spathulataになっていた。Kalanchoe integraはKalanchoe deficiensのシノニムでアラビア半島産の赤花のカランコエである。
受付に置かれた花のように展示されているリュウキュウベンケイソウKalanchoe spathulata
花弁が5枚の花が混じっている
葉は匙状
さて、御苑温室の奥地へと歩を進め乾燥地エリアへ行くと、一昨年も見た仙女の舞が健在といえば健在だった。元気そうではあったが、以前は曲がりくねって頭上高くそびえていた部分は折れてしまったのか、背は低くまとまっていた。その代り幹の中途から分岐した若くて小さな枝に花序が出ていた。既につぼみもできている。花そのものが見られなかったのは残念であるが、貴重なのでこれも写真を多く撮らせて貰った。
葉が生い茂る仙女の舞Kalanchoe beharensis
花序とつぼみ
前回あった月兎耳はなくなっていたが、ふと上の方を見ると、擬岩の小さな棚部分にフェッシェンコイKalanchoe fedtschenkoiが生えている(植えてある?)のが見えた。かろうじて花も咲いている。
こうして今回も3種のカランコエを確認できた。あまり頻繁に訪れても変化はなさそうであるが、定期巡回してもよい温室だと感じた。
頭上にフェッシェンコイKalanchoe fedtschenkoiを発見
花も咲いていた
コメント 0