帰化植物としてのカランコエ [others]
主にブリオフィルム節の話となるが、いや、遠回しな言い方はやめよう。思いっきり子宝草の話だが、国内にも何種かのカランコエが帰化している。それも北海道を除く3つのメインランド全てに渡る。
全国農村教育協会の『日本帰化植物写真図鑑〈第2巻〉』によると錦蝶K. delagoensisが伊豆半島、高知県、宮崎県で野生化しているそうである。またセイロンベンケイソウK. pinnataも沖縄で帰化しているとあるが、内地では見られないようだ。
錦蝶はマダガスカル南部が原産なので北部原産のセイロンベンケイソウに比べて耐寒性があるのだろう(程度問題ではあるが)。言うまでもないがマダガスカルは南半球なので北部が赤道方向である。
この本の情報に付け加えると2種とも沖縄、小笠原で帰化している。小笠原諸島では錦蝶は父島、セイロンベンケイソウは父・母・兄・弟の各島で見られる。
上記は文献的に確認できるがネット情報や人からの伝聞によると沖縄ではほかにセイタカベンケイK. suarezensisとラウイK. ‘rauhii’が見られるようである。また宮古島にはロゼイK. roseiが帰化しているらしい。これらのカランコエを沖縄で、あるいは内地に持ち帰って育てて花を咲かせたというような情報を個人のHPやblogを漁って目にした。またラウイは私の娘も沖縄に行った際に見つけて写真を撮ってきてくれた。(http://kalanchoideae.blog.so-net.ne.jp/2015-05-30)
セイタカベンケイは何故か沖縄ではK. tsaratananensisの学名で知られるようだが、この学名のカランコエは全くの別物である。セイタカベンケイK. suarezensis 自体は他種と分類学上の多少の混乱があるが、いずれその辺も整理して紹介したい。しかし沖縄本島ではかなり蔓延っていると思われるこの種だが、不思議なことに沖縄と同じく錦蝶とセイロンベンケイソウが帰化している台湾では見られない(数年前に一度導入されたことはあるようだ)。ラウイやロゼイは園芸植物が逃げ出したものと思うが、セイタカベンケイは売っているのは殆ど見たことがないし、園芸的にもあまり知られていない。何故沖縄で帰化するに至ったのであろうか。
そこである仮説を思いついた。セイタカベンケイは米軍基地に持ち込まれたもの(人為的かそうでないかは問わない)が、ベースキャンプの外にも広まったのではないか。但し、何の証拠もない単なる「おはなし」である。だが何故そう思ったかという根拠はある。
沖縄の帰化動物として有名なシロアゴガエルPolypedates leucomystax は、1970年代のベトナム戦争時に米軍の資材に付いて沖縄に侵入したとされている。海を渡れない両生類はかつて陸続きだった台湾との共通種が4種知られているが、シロアゴガエルに関しては台湾に産するのはPolypedates megacephalusであって別種だ。K. leucomystaxはインドシナ半島産で、沖縄のシロアゴガエルはベトナム産の個体群が起源なのは明らかになっている。
実はセイタカベンケイもベトナムでは帰化植物として知られており、これが戦争中に何らかの形で持ち込まれたとしてもおかしくはない。シロアゴガエルが侵入するよりは簡単だと思うのだが、どうであろうか。根拠なく米軍のせいにしてしまったが、あくまで個人が疑惑を抱いているに過ぎない。(実際は沖縄のものがベトナムに持ち込まれていたとか…)
なお、昔書店で立ち読みした沖縄の植物図鑑にはセイロンベンケイソウなどの他に仙女の舞も載っていたが、これが本当に帰化しているのかは不明である。
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