ブリオフィルムの系統/葉縁に不定芽を形成するタイプ② [systematics]
「葉縁に不定芽を形成するブリオフィルム」というと表現が長くなるので、これをまとめて便宜的にここだけで「子宝草」と呼ぶことにしたい。「子宝草」というのは実際は流通名なのか、栽培品種名なのか、とにかく一般名ではあるが、Kalanchoe laetivirensの和名っぽく扱われている。だから紛らわしいのであるが、元々このブログでは子宝弁慶(シコロベンケイ)と混同が著しいK. laetivirensを商品名であろうクローンコエと呼ぶことにしているので、「子宝草」を一般名称化してしまっても、ここだけのルールということで御容赦願いたい。
もうひとつ敢えて「子宝草」の表現を採用した理由は、もう10年以上前だろうか、子宝草資料室という名だったか、この手のカランコエのHPがあって、いろいろな種を紹介していた。当時カランコエ初心者だった自分はそのHPに随分と刺激されたものである。もう存在していないようなので、かつてのサイトを偲ぶとともに敬意を表して「子宝草」と表現したいと思った。
(子宝草サイトの方、万が一ここを見ていたらコメント頂けると嬉しいです。)
子宝草のうちセイロンベンケイソウをはじめとする何種かは汎熱帯域に広く見られ、いかにもBryophyllum節が世界的に分布しているかのように見えるが、生物地理学的にBryophyllum節の原産地がマダガスカル(+コモロ)であることには異論がない。他の地域では単に帰化植物として蔓延っているに過ぎないが、旺盛な繁殖力のなせる業である。
そのマダガスカルの子宝草はヴォワトー体系では4グループに分けられるというのが、前回までの話だった。ここからが前回の続きとなる(ということは、今回も前振りが長すぎたようだ)。
さて、ヴォワトー体系のグループ分けは以下のようになっている。Boiteau et Allorge-Boiteau(1995)を基本として、その後記載された種を追加して種レベルでリストアップしてみる。変種や品種はいずれ別の形で整理したい。
① Scandentes:Kalanchoe schizophyllaスキゾフィラ(シゾフィラと表記することもある)、Kalanchoe beauverdii黒錦蝶、Kalanchoe ×rechingeriライジンガリ、Kalanchoe ×poincarei
② Bulbilliferae:Kalanchoe daigremontianaシコロベンケイ、Kalanchoe delagoensis錦蝶、Kalanchoe laetivirensクローンコエ、Kalanchoe sanctula、Kalanchoe ×houghtonii不死鳥?
③ Suffrutescentes:Kalanchoe roseiロゼイ、Kalanchoe fedtschenkoiフェッシェンコイ、Kalanchoe laxiflora胡蝶の舞(ラクシフローラ)、Kalanchoe marnierianaマルニエリアナ、Kalanchoe serrataセラタ、Kalanchoe waldheimiiワルトハイミィ、Kalanchoe tenuiflora、Kalanchoe ×lokarana、Kalanchoe ×richaudii
④ Prolifrae:Kalanchoe pinnataセイロンベンケイソウ、Kalanchoe proliferaプロリフェラ、Kalanchoe rubellaルベラ、Kalanchoe curvula、Kalanchoe gastonis-bonnieriガストニス・ボナリ、Kalanchoe suarezensisセイタカベンケイ、Kalanchoe mortagei、Kalanchoe bogneri、Kalanchoe macrochlamys、Kalanchoe maromokotrensis
上記以外に近年記載されたKalanchoe cymbifolia、Kalanchoe humifica、Kalanchoe peltigeraがあるが、グループ分けした場合の所属が不明である。また、近々一部の分類種群でレビジョンが発表されて、若干のステイタス変更と新種記載が行われるようである。論文が発行され、入手したら情報を更新しようと思う。
上記の体系に対し、以前紹介した進化研体系(湯浅1978「新花卉」98号)では少し違った分類を提示している。
ここではトウロウソウ亜属Subgenus Bryophyllumとして、その下に①ラキシフローラ節Section Laxiflora、②ガストニス節Section Gastonis、③セイロンベンケイ節Section Pinnata、④ビューベルディイ節Section Beauverdiiの4節を設けている。同じ4グループでもヴォワトー体系とは少し異なっている。
2つの体系を比較すると、下記のようになる。
Boiteau et Allorge-Boiteau (1995) | 湯浅(1978) | |
1 | Scandentes | ビューベルディイ節 |
※但しschizophyllaはキチンギア亜属 | ||
2 | Bulbilliferae | ラキシフローラ節 |
3 | Suffrutescentes | |
4 | Prolifrae | ガストニス節 |
セイロンベンケイ節 |
総合的に考えて湯浅の進化研体系に1票入れたいところだが、一長一短といったところだろうか。系統学的根拠を無視して自分勝手な都合で言うと、Scandentesは湯浅の体系、Bulbilliferae・Suffrutescentesはヴォワトー体系、Prolifraeは湯浅の体系にすると、頭の中がすっきりする。ここではこれ以上の言及は避けるが、近々各グループに所属する種を列挙するような作業を試みようと思う。
Scandentesの黒錦蝶Kalanchoe beauverdii
Bulbilliferaeのシコロベンケイ=コダカラベンケイ(本物)Kalanchoe daigremontiana
Suffrutescentesの胡蝶の舞Kalanchoe laxiflora
ProlifraeのプロリフェラKalanchoe prolifera
コメント 0