カランコエ・ラウヒー(ラウイ) [taxonomy]
90年代の終わりというか、20世紀の終わりというか、10数年前にベル型とか釣鐘型と称するタイプの花が咲くカランコエが出回っていた。今は下火になりつつあるが、当時はよく町の花屋で見かけた。ウェンディやミラベラに混じって、カランコエ・ラウヒーという品種が出てきたのもこの頃である。今ではかろうじて多肉植物のカテゴリーで見かける程度だが、当時はラウヒーは花卉として出回っていたのだ。
ラウヒーの名はWerner Rauhに因んでいるので、hは発音しないでラウイという方が正しい。同じカランコエでも月兎耳の閃光寺の方は「ラウイ」と呼ばれているから、このブログでは花卉業界にささやかに抵抗して花卉のラウヒーもラウイと呼ばせて頂くことにしたい。
さて、このラウイはまことしやかにKalanchoe rauhiiなどと紹介されているが、実はこんな学名はない。正確に言うとこの名で記載された植物はない。Shaw(2008)のシコロベンケイグループの調査によると、この植物はオランダからKalanchoe ‘Lucky Bells’として売り出したものであるという。(余談になるが日本ではハッピーベルというミラベラに似た花で赤とピンクの2品種が出ているものがあり、名前を混同しやすい。)この植物の由来はRauhがマダガスカルで採集したものと言われているが、不明確である。自然交配種ではないかとの示唆もある(Karper and Doorenbos, 1983)。
前述のShaw(2008)は、このラウイの正体はK.ロゼイの変種、Kalanchoe rosei var. variifoliaであるとしている。これは、それまではroseiの亜種とされていたが、Shawが同論文で変種にステイタスを変えた。ネットで検索すると‘Lucky Bells’を検索すると確かにvariifoliaであるとしているサイトが多い。そしてこのKalanchoe rosei var. variifolia自体が、雑種起源ではないかとされている。ある説ではロゼイとシコロベンケイとの雑種とされるが、Shawは錦蝶が絡んでいるのではないかと示唆している。
正体は一応ロゼイの変種ということで落ち着きそうだが、その起源はいまだ不明という結論である。
ラウイは強い鋸歯を持つ葉が特徴的で、大きく育つと葉縁に多少色がつく。花は錦蝶に似ていて、花が終わると花序に不定芽が発達する。葉にも多少不定芽がつくが、葉を切り離して土の上に置いておくと、より多くの不定芽が出てくる。
南向きのベランダがある部屋に住んでいた時、2、3年は外に出しっぱなしで冬を越したが、2011年の冬は寒くて凍死してしまった。こういうリスクは、多くのカランコエに当てはまるだろう。あるいは東京都心であればフレームなしで冬越し出来るかもしれない。
まだ若い個体です
成長した個体の葉は葉縁が多少黄色く色づきます。
花はブリオフィルムの典型的なタイプです。
花後の花序には不定芽がついて成長を始めます。
葉にもこのように不定芽が着きますが、あまり多くはありません。
そして、屋外では冬に凍害にあって死滅してしまいました。
フレーム内のものだけ残りました。関東の冬は無理なようです。
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