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シルバースプーンとヒルデブランティ/白蝶の舞 [taxonomy]

 この2種の関係、複雑な事情はないのだがとにかく良く似ている。特に若い株は見分けがつかない。若くなくても変種や個体によって区別できなかったりする。でも別種である。花さえ咲けば、色の違いですぐにどの種か分かる。共につぼ型の花が咲くが通称シルバースプーンことKalanchoe bracteataは、花筒が角張り赤からオレンジ色の花、長さは1016㎜もある。一方、ヒルデブランティ/白蝶の舞Kalanchoe hildebrandtiiは花筒が5㎜程度で小さく丸みを帯び、緑がかった白色から黄色の花が咲く。

基本的な分布はシルバースプーンがマダガスカル南東部、ヒルデブランティはマダガスカル中部から南西部にかけてと若干異なるが、一部では分布域が重なっているようだ。花以外にこの両種を同定できる違いがあるのだろうか。実は比較的簡単に考えていたのだが、どうも調べるとかなり難しい問題であった。

というのも、私が実見した個体はシルバースプーンは良く売られている美しい白っぽい葉のものだが、ヒルデブランティは変種のglabraと思われるもので、濃い緑色の葉をしている。葉色が全く違ったので、区別は簡単だと早とちりしたのだ。ところがシルバースプーンにも同じglabraという亜種があり緑の葉で、ヒルデブランティも変種hildebrandtiiは白っぽい。対応する変種同士を見れば、どちらも同じようなものなのだ。

 そこでまたBoiteau Allorge-BoiteauKalanchoe de Madagascar1995)の検索表を見ると、そんな仏単語は辞書にないよ、というような表現で分かりにくいのだが、シルバースプーンの葉の毛状突起は矢状方向(正中線面)に走り、ヒルデブランティの毛状突起は放射状であるという。自宅には両種と思しき個体があるので、毛状突起を30倍に拡大して見たが顕著な違いは分からなかった。というか記述と照らし合わせても訳が分からない、というのが正直な感想だ。実は1種はシルバースプーンであるが、もう1種がヒルデブランティでない可能性もあるので、元々比べる意味も希薄なのだが、著しく違いがあれば同定法として便利だと思ったのだ。しかしそういう安易な計画は、たちまち頓挫してしまった。

 仕方ないので、Illustrated Handbook of Succulent Plants: CrassulaceaeDescoingsの記載を見てみる。ここでは鱗片のような表現になっていて、これを毛状突起(と言ってもトリコーム)と言っても同じなのだが、シルバースプーンは先の尖った3方へ分岐した放射状、ヒルデブランティは2又もしくは多裂した放射状ということで、確実な差異とならない。2又か3又か明確なら良いが、多裂となると3又も含む事になる。ルーペで見ようが、顕微鏡で見ようが単一個体を調べた場合、決定打に欠ける。

 

 面倒な事になったが、葉の記載を比較したところ、ややあやふやだが多少の差異が見つかった。シルバースプーンの葉は、卵形や皮針形で27×14㎝、先端が楔形で鋭く尖っている。それに対しヒルデブランティは葉が厚く卵形か丸形で1.55×13.5㎝、先端(の尖り具合)は鈍いか丸い。

 これが確実なら何とか区別はつきそうだ。しかし写真で見る限り、両種を葉の形だけで同定するのは難しそうだ。更に高さ10㎝以下の小さな株では、ヒルデブランティの葉先も尖っている。結局は花が咲くまで(何年かかるか分からないのだが)待つしかないのかもしれない。

 カランコエ節の種については唐印に続き、2連敗した感が否めない。やはりカランコマニアになるのは難しいものだ。

 

Kalanchoe bracteata.png

Kalanchoe bracteata 写真は悪いが、取りあえず葉先は尖っている。

Kalanchoe hildebrandtii.png

バイオリウムのKalanchoe hildebrandtii 変種のglabraと思われるもの。

葉先は確かにまあ...、なんとなく鈍いといえば鈍い。


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