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ベハレンシス追補(後編) [taxonomy]

 今回は前々回の続きで、ベハレンシスの原種についての再整理を試みた。

❒原種
 以前にベハレンシス原種をまとめたときは、葉の色と特徴に着目して、茶色・灰色・無毛と葉縁の切れ込みの有無を組み合わせて分けてみた。今再びこれを顧みて、少し修正を加えたいと思う。葉の切れ込みと波打ちは育ち方によってバラつき、ある局面では波打ちがなくともそれから少し育つと波打ちが現れるので、そういう形質は無視してもよく、切れ込みの有無だけで分ければ良いと判断した。
 ベハレンシスの品種というか型というか、あるタイプが原種であるか否かの判断は葉が盾状葉であること、葉柄が落ちた後の茎には棘上の跡が残ることと言われている。根上不定芽の形成も特徴の一つだろう。それらの特徴を有するものを分けてみると、
・葉色:茶、白、グリーン(無毛)
・葉縁:切れ込みあり/なし
・葉形:標準的/長葉
という区別ができる。

 これと以前紹介した3つの変種との関係を見てみたいが、変種といっても正式に記載されたわけではなく学名は不適格invalidである。更に基変種の学名は提唱されていない。というわけで3つの変種としてK. beharensis(基変種)、K. beharensis var. aureo-aeneus、K. beharensis var. subnudaがあるとして、上記の組み合わせを当てはめてみよう。
・基変種:葉色…茶、切れ込みあり、葉形標準
・aureo-aeneus:葉色…茶、切れ込みなし、葉形標準
・subnuda:葉色…グリーン(無毛)、切れ込みなし、葉形標準
となる。この他に見られるものとして、葉色が白で切れ込みなし、葉形標準のものはaureo-aeneusに近縁と思われ、俗に'Napoleon's Hat'とか'Alba'と呼ばれる。
 無毛のsubnudaは、ときには単にnudaとも俗称される。育ててみると頂芽の新葉は有毛のこともあれば、赤くて無毛のこともある。これは遺伝的な違いではなく、そのときの株の状態(成長・季節等)によるものである。しかし最近見つけたもので、新しい芽は無毛だが成長した葉は短い毛が密度薄くあるタイプがある。全く無毛なものがnudaで、こちらがsubnudaと言われれば信じてしまうような品種である。また、有毛だが毛が短いのか密度が薄いのか、葉がグリーンの品種も存在する。

 もう一つ以前紹介できなかった長葉タイプのものは、切れ込みありのものがRusty、なしのものがstoloniferousと俗称されている。これらとは別に環境要因か何かで葉が長く育つことがあるが、それは異なる品種という訳ではなさそうだ。
 大体以上が原種というか、野生のベハレンシスのバリエーションである。あとはこれらの生育環境による発現の違いだろう。また別のタイプを見かけたら報告したいと思う。

基変種K. beharensis
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K. beharensis var. aureo-aeneus
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K. beharensis var. subnuda
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葉色が白で切れ込みなし'Alba'
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葉色がグリーン、新しい葉が無毛
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長葉タイプstoloniferous
beharensis stoloniferousIMG_1177.JPG

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さらば夏の日 [others]

 今回はベハレンシスの後編を書くつもりだったが、夏の話題はこの機を逃すと無意味な話題となってしまうため少し寄り道したい。

 さて、毎年このくらいの時期になると暑さによる犠牲者発生の危険性がなくなり、しみじみとした安堵感を覚える。しかし更に1ヶ月もすると、今度は冬支度の心配をしなければならなくなる。カランコ趣味に良い季節は僅かなものだ。それはともかく今年の夏は、6月下旬から1ヶ月以上に及ぶ日照不足が深刻であった。朝には日が射すこともあったが、家のベランダは昼頃にならないと陽が当たらない向きのため植物たちは本当にずっと日光にありつけなかったのだ。
 更に7月末になると日光は得られたが、急な気温上昇と共に35℃以上の日が2週間以上続いた。猛暑日が2、3日続いて1日涼しい日が挟まるというパターンだと暑さに弱い着生カランコエも生き延びるのだが、ベタで暑さが続くと耐えられないので室内に取り込むしかない。
 そしてダメ押しに9/9の台風である。前日の日曜に危なそうな鉢を大量に室内に取り込んだが、台風後に気温が急上昇したこともあり、勤めもあるので、すぐにはベランダに戻せず日照不足=飢餓状態で1週間過ごさせるしかなかった。

 以上のような状況で今年もまた夏は多難であった。6月の日照不足の影響で、幾つかのカランコエは頂芽が委縮して葉の生育に障害を受けた。特にリュウキュウベンケイソウやガランビトウロウソウといったアジアのもので被害が目立った。更に多くのブリオフィルムでそうか病が発生し、これもまた頂芽の委縮がひどく中には完全に頂芽が損なわれたものもあった。カランコエは7月末に日照が得られると間もなく支障は解消していったが、ブリオフィルムは何週間か薬剤散布を行いようやく8月後半になって回復し始めた。
 熱波による着生カランコエのダメージは言うまでもなく、アフリカ大陸産のクレナータK. crenataも壊滅的なダメージを受けた。この種は過去にもちょくちょく暑さで何個体か失っているが、今回は全滅してしまう可能性もある。勝手に暑さに強いだろうというイメージを抱いていたが、今度こそ暑さに弱い種と脳内情報を書き替えたい。
 台風のときは、強風の被害も多少あったが、室内への出し入れ時にどこかにぶつけて葉を落としてしまった方が辛かった。またマダガスカル直入荷のキンチョウなどたった1週間足らずの室内取り込みで、葉が全て下垂してしまった。

 日照・猛暑・台風と3拍子揃った被害を受けたこの夏にやり場のない憤りを感じて書きなぐったため、何の含蓄もない文章となってしまったが、カランコ趣味家にとって、夏は過酷で楽しめない季節であることを再認識した次第である。

日照不足で頂芽が委縮したリュウキュウベンケイソウK. spathulata
spathulata 台東IMG_8889.JPG
そうか病にかかったマロモコトレンシスK. maromokotrensisとミニアータK. miniata
maromokotrensis  IMG_8878.JPG
second miniataIMG_8887.JPG
暑さに敗北したK. crenata
crenataIMG_9407.JPG
これも夏の被害? セミに産卵されたローズリーフ‘Roseleaf’
ローズリーフIMG_9406.JPG

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