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温室のカランコエ;強羅公園・ブーゲンビレア館 [others]

 ここ1年間に訪れた温室は殆どなく、ブログにも1件しか書かなかった。それも寂しい気がするので、敢えて書くまでもないと思っていたが、強羅公園の温室でもカランコエを見たので一応記録として残しておこうと思い直した。
 強羅公園は箱根の登山鉄道とケーブルカーの駅がある強羅からほど近く、公園(有料)内に4棟の温室がある。それぞれ熱帯植物館・熱帯ハーブ館・ブーゲンビレア館・イベント館となっているが、訪問時は前の3館しか入ることは出来ず、その内ブーゲンビレア館でのみカランコエが見られた。
 勿体ぶってここまで引っ張ってしまったが、見られたカランコエは実際のところウェンディとセイロンベンケイソウの2種のみであった。

 ブーゲンビレア館では、通路わきの植え込みに混じってウェンディが2ヶ所にあった。地植えのウェンディは初めて見たが、枝ぶりや葉の状態など販売されているものと変わらぬ品質であった。導入後まもなく地植えになっているだけなのかもしれない。植え込みの植物に鉢花育成者並みの手入れをしている可能性もなくはないが。
 もうひとつのセイロンベンケイソウは、10数年前にここを訪れた時に何かの鉢の片隅にひっそりとあったのを覚えている。今回は、やはり片隅ではあるものの地植えであった。そのためか大型に育っていて頂芽近くでは複葉になり、なかなか良い感じだった。

 まさかこの2種のカランコエを見るためにわざわざ訪れる人はいないと思うが、記録として残しておきたい。

強羅公園入口
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期待をそそる温室の外観
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ブーゲンビレア館入口
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高品質の地植えウェンディK.‘Wendy’
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本来の複葉になっているセイロンベンケイソウK.pinnata
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落葉から発芽している

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タグ:強羅公園
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アラビアン・カランコエ [taxonomy]

 カランコエというと花も多肉もマダガスカルのイメージが大変強く、それにチラホラとアフリカ大陸産の多肉が加わる程度で、アジア・アラビア産は種も少ないし一般的でもないので栽培されることが少ない。
 アラビア産カランコエでいうと唯一例外なのは、ファリナケアである。これは花卉とも多肉とも言える小型種でソコトラ島産である。一般的なカランコエと異なり短日植物ではない。自生地の写真を見ると岩の隙間で乾燥と陽射しに耐え忍んで生きながらえているように見える。ということで家では以前は他種よりも乾燥気味にしていたが、花咲き具合など乾燥してもしなくてもあまり変化はないかもしれない。

 さてMiller et Cope(2009)の“Flora of the Arabian peninsula and Socotra vol.1”によるとアラビア半島およびソコトラ島(イエメン)には以下の13種のKalanchoe属が分布している。
・Kalanchoe citrina
・Kalanchoe crenata
・Kalanchoe glaucescens
・Kalanchoe laciniata
・Kalanchoe lanceolata
・Kalanchoe rotundifolia
--------------------------------------------------------------------------------
・Kalanchoe alternans
 Kalanchoe alternans v. lanceolata
・Kalanchoe bentii ssp. bentii
・Kalanchoe deficiens
 Kalanchoe deficiens v. glabra
・Kalanchoe farinacea
・Kalanchoe robusta
・Kalanchoe yemensis
--------------------------------------------------------------------------------
・Kalanchoe sp. (K. sabaeaに似た未記載種)

 このうちアフリカ大陸との共通種は点線から上の6種、アラビア特産種が下の6種+2変種である。未記載種は何とも言えないので除くとして、その他12種中ロツンディフォリアKalanchoe rotundifolia、ファリナケアKalanchoe farinacea、Kalanchoe robustaの3種はソコトラ島産である。Kalanchoe rotundifoliaは大陸との共通種なのにソコトラ島にしか見られないことから、帰化植物である可能性も示唆されている。
 ネット検索するとアラビア特産の6種全てが趣味の世界で知られているが、Kalanchoe deficiensの基変種とKalanchoe alternans v. lanceolataは見られないようだ。我が国にもそこそこ入ってきており、確認できなかったのは上記の他Kalanchoe yemensisとKalanchoe robustaである。但し、Kalanchoe robustaは最近ISIで頒布している。国際多肉植物協会はISIと連携しているようなので、私が知らないだけで出回っているかもしれない。

 アルテルナンス(オルタナンス)Kalanchoe alternansとKalanchoe deficiens v. glabraもISIで頒布した種である。通販で購入した某氏のところで開花したため、独特なねじれた花弁から本種であると同定できた。Kalanchoe deficiensはKalanchoe integraとシノニムで現在はKalanchoe deficiensの名が残っている。10年ほど前までリュウキュウベンケイソウもKalanchoe integraと呼ばれていたが、以前記事にしたように現在は別種Kalanchoe spathulataの基変種とされている。リュウキュウベンケイソウは黄花であるが、Kalanchoe deficiensは赤花である。
Kalanchoe bentiiも国内にて通販で売っているのを見たことがあるが、高価だったので手を出さなかった。別亜種にKalanchoe bentii ssp. somalicaが知られ、その名のとおりソマリア産なので上記のアラビア産リストには入れていない。Kalanchoe bentii自体は国内では希少であるが、キューエンシスKalanchoe×kewensisの片親であると言えば若干身近に感じられる。

Kalanchoe alternansは変種も含めてサウジアラビアとイエメンに分布し、Kalanchoe deficiensの2変種、Kalanchoe bentii ssp. bentii、Kalanchoe yemensisも全てイエメンに分布している。ソコトラ島もイエメンなので、Kalanchoe robustaとKalanchoe farinaceaを含めてアラビアン・カランコエの全種がイエメンに産する。他のアラビア半島の国では僅かにKalanchoe alternans v. alternansがサウジアラビアに見られるのみである。

 アラビアン・カランコエは種類も入手の機会は少なめであるが、なかなか個性的な面々であるし花も独特なものがあるので、個人的には惹かれるものがある。


アラビアンの定番ファリナケアKalanchoe farinacea
Farinacea PA240580.JPG 
Kalanchoe deficiens v. glabraは特徴なきカランコエかな?
deficiens var. glabraIMG_5180.JPG 
アルテルナンスKalanchoe alternans基変種
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Kalanchoe alternans v. lanceolata(原記載Raadts, 1972より)
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アフリカ大陸との共通種Kalanchoe glaucescens
glaucescensIMG_7807.JPG 

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