温室のカランコエ;神代植物公園 [others]
10年近く行ってなかったが、諸事情(家族の希望)からGWに深大寺に行くことになった。となれば神代植物公園に寄らない訳にはいかない。2011年に訪れた時の記録では温室入り口の近くにキンチョウ、セイロンベンケイソウ、クローンコエ、月兎耳の4種があったのみであるが、近年温室内は改装されたとも聞いていたので、多少の期待感はあった。
売店を物色し、シャクナゲとさくら草を見て、バラ園で早咲きのバラを楽しんだ後、やっと温室に辿り着いた。温室の内部は熱帯植物、ラン・ベゴニア、熱帯スイレン、小笠原の植物、乾燥地の植物と分かれていて、最後の部屋に至るまでカランコエは見つけられなかった。そして最後の乾燥地の部屋に入るとベハレンシス(仙女の舞)K. beharensisの姿が目に飛び込んできた。そこで期待感は一気に高まったが、その後その隣に「唐印」が植わっている以外カランコエがない事が分かって落胆してしまった。
ベハレンシスは高さ1.2m位、ノーマルタイプのものだと思ったが、よく見ると2本植えてあった。1本はノーマルで枝分かれしており、葉に切れ込みがある茶色の毛のタイプだ。もう1本はよく見ると葉に切れ込みがなく、茶色であった。これはノーマルタイプが新しい葉でたまたま切れ込みがないものか、インテリアショップにある茶毛で切れ込みなしのタイプなのかは判然としなかった。
ベハレンシスは高さ1.2m位、ノーマルタイプのものだと思ったが、よく見ると2本植えてあった。1本はノーマルで枝分かれしており、葉に切れ込みがある茶色の毛のタイプだ。もう1本はよく見ると葉に切れ込みがなく、茶色であった。これはノーマルタイプが新しい葉でたまたま切れ込みがないものか、インテリアショップにある茶毛で切れ込みなしのタイプなのかは判然としなかった。
「唐印」は3株あり、一見してK. luciae即ち紅唐印であったが、名札はK. thyrsifloraなっていた。この2種は和名(流通名?)がいい加減で、巷ではどちらも「唐印」と呼ばれているので、唐印と呼んでも間違いではない。しかし学名は明確に別種を区別するので、この場合は「間違い」であるからややこしい。別種に同じ日本語名を付けてくれるな、と言いたい。
しかしこんなに立派な温室にたった2種とは失望もしたし、報告もつまらないものとなった。
しかしこんなに立派な温室にたった2種とは失望もしたし、報告もつまらないものとなった。
今回は時間がなくて見られなかったが「植物多様性センター」という施設が新設されていて、そこの博物館へ行くと何かカランコエ絡みの展示があったかもしれない。可能性は著しく低いが、行けなかったことで妄想が膨らむのは世の常である。
ともあれ、また10年くらいしたらもう一度行ってみるかもしれない。
ともあれ、また10年くらいしたらもう一度行ってみるかもしれない。
子宝草目録4-④ Proliferae/羽状葉のブリオ達 [taxonomy]
小さな葉が連なってひとつの大きな葉を構成するようなタイプの葉を羽状複葉といい、マメ科植物やサンショウに代表される。前回紹介したセイロンベンケイソウKalanchoe pinnataも学名からして羽状葉の種であるが、常に羽状複葉を形成するわけではない。しかし、カランコエのこのグループにはベンケイソウ科には稀な羽状複葉の種が他にも3種揃っている。
よく見かけるのは高さ3mと大型になるプロリフェラKalanchoe proliferaである。マダガスカル中部原産だが大陸アフリカでも帰化して手こずっているようである。反面、我が国では大型の鉢に植えたものがインテリア系の店でも扱われている。最近この種をセイロンベンケイソウと間違って(「偽って」ではないだろう)表示した鉢植えをよく見かける。
まだ小さな苗のときは複葉ではないが、少し育つとすぐに複葉になる。ある程度育つと葉に皺が入ってきて委縮したように見えるのが残念だ。葉を切り取って土の上に置くと葉縁だけでなく葉軸や花序からも不定芽を生じる。萼筒が緑で角ばり、赤い花と相まって美しい。
セイタカベンケイのところで述べたように夏季は薄手で一般植物のような葉だが、冬季には固く多肉質の葉が生じる。一般的な花卉でもマーガレットは夏に多肉、冬に普通の葉となり、このような変化は興味深い。プロリフェラはまた、葉裏に甘露を分泌する。虫が集まりそうなので庭で栽培するときは覚悟したい。
まだ小さな苗のときは複葉ではないが、少し育つとすぐに複葉になる。ある程度育つと葉に皺が入ってきて委縮したように見えるのが残念だ。葉を切り取って土の上に置くと葉縁だけでなく葉軸や花序からも不定芽を生じる。萼筒が緑で角ばり、赤い花と相まって美しい。
セイタカベンケイのところで述べたように夏季は薄手で一般植物のような葉だが、冬季には固く多肉質の葉が生じる。一般的な花卉でもマーガレットは夏に多肉、冬に普通の葉となり、このような変化は興味深い。プロリフェラはまた、葉裏に甘露を分泌する。虫が集まりそうなので庭で栽培するときは覚悟したい。
プロリフェラによく似るが小型のKalanchoe rubellaはマダガスカル中東部に分布している。こちらはプロリフェラのように季節で葉の厚みは変わらず、委縮もしてこない。種小名のルベラは英語では風疹を意味するが、語源としては赤みがかったという意味である。成長すると葉軸に赤みがつき、葉には斑が入る。
羽状複葉タイプにはもう1種、1997年に記載された小ぶりのKalanchoe curvulaがある。マダガスカル北部産と示唆されているが、タイプ標本はアンタナナリボ(タナナリボ)の植物園の産である。ICNのサイトによれば以前本の紹介記事に載せ、前の方の回でKalanchoe mortageiの写真を引用したHamet and Marnier-Lapostolle(1964)にKalanchoe rubellaとして載っている写真が実はこのKalanchoe curvulaであるという。