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子宝草目録4-③ Proliferae/有史以前の世界進出 [taxonomy]

 最も有名なカランコエはセイロンベンケイソウKalanchoe pinnataかも知れない。世界中とは言わないまでも、多数の温暖な国々に進出している。沖縄や小笠原など国内でも帰化している。マダガスカル原産だが、和名はセイロンベンケイソウである。帰化植物をスリランカ産だと思って名付けたのだろう。名前自体は悪くない。
 諸々の情報を当たるとブリオフィルムの原産地を「マダガスカル、熱帯アフリカ」としている。この「熱帯アフリカ」というのは有史以前(といっても西洋基準なのでたかだか2,000年より前)にマダガスカルから大陸にもたらされたセイロンベンケイソウのことを指していると思われる。元ネタは特定できないが、最初に権威者が書いたものを盲目的に何十年も孫引きしてきたのだろう。この問題には今はこれ以上触れないが、昨年書いたクローンコエ同様の例である。
  といいつつもこの種が大陸移動する前(1億年から7千万年前?)から存在していて、故にそこから散らばったアフリカ大陸・マダガスカル・インド(及びスリランカ)には最初から分布していたのではないかと言うことを言い出す人がいるかもしれない。しかし、それにはその時期に散らばったセイロンベンケイソウがマダガスカル以外では分化しなかったという無理のある仮説が必要となる。

 さて学名のpinnataは「羽状の」の意で調子よく育てると羽状複葉(複数の小葉からなる葉)になる。家で適当に育てていると、ちょっと複葉っぽくなってもすぐに何かをぶつけて落葉させてしまったり、次の新しい葉は複葉にならなかったりとうまくいってない。雑草のようでもあり、多肉植物としては見向きもされないようだが、個人的には大変美しい植物だと思う。


陽光の下に葉が美しいセイロンベンケイソウKalanchoe pinnata
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基変種は少なくとも複葉5枚にはなる
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良い写真がなかったが、萼筒はリンゴのような模様がある
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温暖な地では容易に増殖し帰化する
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 かつて基変種を除き次の4変種が記載された。
Kalanchoe pinnata var. floripendula
Kalanchoe pinnata var. genuina
Kalanchoe pinnata var. brevicalyx
Kalanchoe pinnata var. calcicola
現在ではすべてKalanchoe pinnataのシノニムとされているが、Kalanchoe pinnata var. brevicalyxとKalanchoe pinnata var. calcicolaの2者はかつてBoiteau et Allorge- Boiteau (1995)により、別種に昇格されたことがあるので、無視できないかと思う。
これら2つの変種の特徴はというと、
Kalanchoe pinnata var. brevicalyx:萼は発達すると直径10mm、長さ10mm、萼片は肉厚で非常に短く2mmを超えず、緑色で、多かれ少なかれ規則的な蔓状のラインがある。複葉は最大7枚、葉の縁は赤色。
マダガスカル北西部で見つかっている。
Kalanchoe pinnata var. calcicola:萼は非常に長く、長さ45mm以上、基部の直径12mm。萼片が直径20mmに分裂するまで伸長する。かすかに緑色で明るい斑がある。複葉は3枚以上にならない。
マダガスカル北端で見つかっている。
これに対し、基変種が区別できないのだが萼筒が10mm以上だが、45mmというような巨大にはならないで、葉の縁が紫から赤紫、複葉が5枚になるなどの特徴で判断していくくらいだろうか。基変種でない上記の変種が園芸的に知られているとは思えないが、肉厚でよく羽状複葉が発達する少し変わったものが見られ、個人的にbrevicalyxっぽいと思ったりしている。


肉厚の個体、成長すると葉縁は細く赤い縁取りが入る
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この品種?は容易に複葉になる
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 栽培品種的なものを紹介するとマジックベル“Magic Bell”なる名称で売られているものがあるが、普通の基変種とどう違うのであろうか。あるマニアの方によると彼の経験上、この品種?は複葉3枚までしかならないという。私なぞは普通のセイロンベンケイソウも3枚までしか育てたことがないので、この違いは自力で解決出来そうにない。実際はただの商品名ではないかと思っている。
 その点、クヌート・イェプセン社のKalanchoe pinnata ‘Zanzibar’(本来ならば“Zanzibar”と表記すべきだろう)は写真を見る限り萼筒の感じが少し変わっていて、栽培品種と見做して良いかも知れない。昨年輸入元に問いあわせたときは試作中との事だったが、そのうち国内でも入手可能になるのではないかと期待している。
 また、以前ネット検索していたらセイロンベンケイソウの斑入り個体と見られる写真があった。こういうものにあまり興味はないのだが、実物は美しいかも知れない。


マジックベルの苗“Magic Bell”
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街角のカランコエ;春の東京と埼玉 [others]

 4月からベランダのフレームにかけたビニールも外せて、カランコエのシーズンが始まる。同時に冬の間は出不精になっていて休眠していた家族サービスも再始動し、急に忙しくなる。
 そんなわけで青山へ出向いて界隈を歩くと(1月の極寒の日々を乗り越えて)生き延びたカランコエ達を見ることができた。

ベハレンシス、唐印、街角の花
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 また埼玉県の川越や近隣地へ行った時も、冬越ししたわけではないだろうが幾つか印象に残るカランコエを見たのでスナップしてみた。


街角で見た花もの
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老舗うなぎ屋には八重咲きのウェンディ(サニーディ“Sunny balloon”)が
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近郊の街の電器屋にはミラベラとキンチョウがあった
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 今回は何の意味もない内容だが、シーズン到来、ということでお茶を濁してみた。

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