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胡蝶の夢 [taxonomy]


 ブリオフィルム亜属Bryophyllumというよりその中の子宝草の仲間(Invasores節)で、最も好きな種であるラクシフローラKalanchoe laxifloraはマダガスカル中部から中南部にかけての中央高地帯に分布している。これと離れて南東部のタウラニャロTaolagnaro(フォール・ドーファン)付近からも記録があるが、これはKalanchoe ×lokaranaの誤認と思われる。K. ×lokaranaの原記載(Descoings, 2005)によるとラクシフローラと何かの交配種であろうとされているが、個人的におそらく両親はフェッシェンコイとマルニエリアナではないかと踏んでいる。このK. ×lokaranaにも2,3の型が知られており、以前子宝草目録で触れたサン・ルイ山Pic Saint Louisのものもその1型であろう。


 近藤ほか(1983)によると、ラクシフローラには3亜種(注;そこでの記載は「変種」)が記載されているが、識別可能な型は10以上に及ぶ、としている。記載された亜種は以前も紹介したことがある下記の3つである(Boiteau et Octave Mannoni, 1949)
Kalanchoe laxiflora ssp. violacea(基亜種に相当)
Kalanchoe laxiflora ssp. stipitata
Kalanchoe laxiflora ssp. subpeltata
 10以上ある各型は、このうちどれかに半ば強制的に振り分けることになるが、広大な彼の地にはまだ知られていない型も多々ありそうだ。近藤ほか(1983)が「10以上」と表現したのも、彼らが数次に及ぶマダガスカル遠征で確認しただけで10型はあったということだろう。
 因みに最近ではSmith & Figueiredo(2019 ; Bradleya 37)にて3亜種は全て適格に(valid)記載されておらず、無効名であることが述べられているが、ここでは区別できるものとして扱う都合上、以前の名を参考にしたいと思う。実際は不適格な名であることの一端として、基亜種名がKalanchoe laxiflora ssp. laxifloraではないことで既にアウトである。


 さて、この3亜種であるが子宝草目録でRauh(1995)の記述を基に特徴を記したが、今度はもう少し詳しく原記載(Boiteau et Octave Mannoni, 1949)から見てみよう。原文が仏語なので、多少の意訳があるが御容赦願いたい。

Kalanchoe laxiflora ssp. violacea  
葉は通常緑色、(葉身基部の)耳状部は発達が悪く、葉縁は赤みを帯びる。
萼は中央が膨らみ基部が狭く上部が広い。均一に紫がかり直径は8 mm 以上。花冠は赤かピンク。

Kalanchoe laxiflora ssp. stipitata
葉は茶斑があり、耳状部はあまりない。
萼は細くへこみ直径6 mmを超えない、縁の切れ込みに小さな赤い斑がある。
花冠は基部が約1㎜細く、色は赤、もしくはオレンジ・イエロー。
雄蕊は僅かに突出し、花弁は多少広がる。

Kalanchoe laxiflora ssp. subpeltata
葉は縁取りがあり、鋸歯の切れ込みは赤い。
大きな耳状部は上方に反り返り、ときにはそれがつながって盾状葉を形成する。
萼筒は卵形でくびれ、花全体の70%に達する(他の亜種では60%に達しない)。色は淡いグリーンで、ときに黄色がかり、切れ込みに斑がある。
花冠は赤、もしくはオレンジで先が広がる。
雄蕊はほぼ花弁の先まで突出する。


 この分類を亜種としてではなく、タイプ分けと見て手元の株を振り分けてみる。
Kalanchoe laxiflora ssp. violaceaタイプのもの 
laxiflora var. violacea typeIMG_4099.JPG

Kalanchoe laxiflora ssp. stipitataタイプのもの
laxiflora PR IMG_3977.JPG

Kalanchoe laxiflora ssp. subpeltataタイプのもの
laxiflora f IbityIMG_4931.JPG
laxiflora f  IbityIMG_3985.JPG

次の写真はstipitataタイプに似るが、今のところタイプ分け出来ない。
ラクシフローラ(cs)IMG_8889.JPG

 その他の上記のものも無理やり振り分けただけで、結構いい加減である。このように分類学的には難しい状況にあるが、(私にとっては)どれも魅力的な植物である。特に葉に模様の出るタイプは、我ながら愚かとは思いつつも集めたくなってしまう(つまり別タイプを見つけると欲しくなる)。かくして今日もKalanmaniaから子宝草マニアへと脇道に反れていくのであった。

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