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ウェンディの翼(後編) [taxonomy]

 前回は個人的に花もので最も心惹かれるウェンディについて述べてみた。少し乱暴にまとめると、
ウェンディKalanchoe‘Wendy’(=‘Pearl Bells’一重)サニーバルーン(サニーデイ)Kalanchoe porphyrocalyx‘Sunny Balloon’(=‘Pearl Bells’八重、‘Dolly’)ということになる。
 そしてウェンディの片親Kalanchoe porphyrocalyxは2変種が知られる。
① Kalanchoe porphyrocalyx var. porphyrocalyx
② Kalanchoe porphyrocalyx var. sambiranensis


 このK. porphyrocalyxは今までBryophyllum亜属であったが、昨年変更があったので記録しておきたい。今まで当ブログで度々引用してきたBoiteau & Allorge-Boiteau(1995)の“Kalanchoe de Madagascar”ではBryophyllum節(現在の分類では亜属)を7つに分け、そのうちEpidendreaeというグループは着生種2種を含んでいた。そのひとつがK. porphyrocalyxであり、もうひとつはKalanchoe unifloraである。このEpidendreae はその40年以上前にBoiteau & Mannoni (1948)が提唱したEpidendreae亜節(subsection)に相当する。時は流れ、上記の2種が近縁なのは変わらないが、2021年にこのグループは激しく動くことになる。

 まずSmith(2021:Bradleya 39)は1993年にRaymond-HametがBryophyllum属(当時の分類)の下位に記載したAlatae節(Section Alatae)を復活させた。Raymond-Hametが1933年に記載したAlatae節は命名規約の要件を満たした的確なvalidものだったので、後のBoiteau & Mannoni (1948)のEpidendreae亜節はシノニムに当たり、消えることになる。Smith(2021)はGehrig et al. (2001)の分子データによるクラドグラムからK. porphyrocalyxとK. unifloraの2種がクレイドを形成することを重視して、Alatae節を再記述した。しかしこの節は以前紹介したカランコエ属下位分類の論文Smith & Figueiredo(2019)に従って、Bryophyllum亜属ではなくKitchingia亜属の下に置かれた。


Raymond-Hamet(1933);確かにAlatae節の記載がある
Raymond-Hamet(1933).jpg


 この後6月になるとSmith et al.(2021 : Phytotaxa 509 (2))は、このAlataeを節Sectionから亜属Subgenusに引き上げた。一つの特徴として帰属する2種の種子には「翼」があるということだ(記載原文では“Graines ailées”)。これは細長い種子の両端にペラペラの付属物が付いているということで、他のカランコエのグループには見られない形質である。
 個人的な見解であるが、Smith & Figueiredo(2019)の分け方によるBryophyllum亜属とKitchingia亜属の特性も帰属種再考の余地があるので、Alatae亜属が独立することによって一段階整理されたように思える。


 因みに亜属名はラテン語のalata(翼のある)から来ているものと思われる。ティンカーベルには羽しかないが、ウェンディには翼があったようだ。


もうひとつのAlatae亜属、ウニフローラKalanchoe uniflora
uniflora IMG_2443.JPG

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