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葉形成熟 [others]


 現生両生類は無尾目・有尾目・無足目の3目に分かれる。具体的にはカエル類、サンショウウオ類、アシナシイモリ類である。基本的には卵から孵化した時点では幼生で、その後生長し変態して亜成体となり、さらに成長を続けるが、直接発生の種など、このパターンの例外も多々ある。例外の一例として、有尾目のうち一生水生生活をおくる種に見られる幼形成熟neotenyがある。幼生の形のまま、あるいは部分的に幼生の特徴を残したまま性成熟し繁殖可能となる現象で、有名なのはメキシコサラマンダーである。(この種の幼形成熟個体は近隣に生息するその他の数種をひっくるめてアホロートルと総称される。)オタマジャクシが変態してカエルにならず、オタマのままで繁殖するというのは知られていないが、有尾目ではそのような現象が何例も知られているのだ。

 上記はカランコエと何の関係もないが、タイトルは両生類の幼形成熟とは裏腹に若いときと成熟してから葉の形が変わる現象を表したここでの造語である。発芽した当初の双葉とその後の本葉の形が違うというのは当たり前なので省くとして、カランコエで良く知られるのはディンクラゲィKalanchoe dinklageiの例で、この木性種では若木のときは鋸歯が目立つ細長い葉をしているが、成長すると葉に幅が増し、鋸歯も目立たなくなる。一種の変態metamorphosisのような変化である。


ディンクラゲィKalanchoe dinklageiの葉形変化

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 以前リュウキュウベンケイソウ種群の欠刻葉について書いたことがあるが、カランコエ属内で系統的には関係なく見られる。例えばK. lobataやK. antenniferaなどKalanchoe亜属内ではアフリカ大陸、マダガスカル、アジアを問わず現れるし、ベハレンシスなんかも欠刻葉と言えそうなものがある。Bryophyllum亜属でもマロモコトレンシスK.maromokotrensisやロゼイK.rosei、ミニアータK.miniataの一部の変種は欠刻葉と言え、見方にもよるがスキゾフィラK. schizophyllaなどもそう言えなくもない。


 これらの欠刻葉の種は若い個体の葉は切れ込みがなく、成長すると切れ込みがある欠刻葉となる。全く個人的な好みの話であるが、植物を育ててこの変化を楽しむのは楽しい。個体発生は系統発生を繰り返すというヘッケルの反復説に従えば欠刻葉は二次的に進化したものだろうかとか、それぞれの種の地理的分布と雨量の関係を調べたら有意なデータは得られるだろうか。あるいは、Kalanchoe亜属のリュウキュウベンケイソウ・ラキニアータ種群とBryophyllum亜属では欠刻葉のタイプが違うので収斂進化とは言えないだろうなどと色々妄想するのも楽しい。

 もっとも最近は何も考えず、この手のフォルムに魅せられていく自分の嗜好を吟味するだけで時は過ぎていくのである。


葉形変化例;冬もみじとスキゾフィラK. schizophylla
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冬もみじIMG_5643.JPG
冬もみじIMG_5094.JPG

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