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バラとローズのエニグマ(中編) [taxonomy]

 世に蔓延るデマは人々の判断を狂わせ、亡国へと導く悪質な要因である的な言われかたをしているこの頃だが、確かに注射をめぐるデマには個人的にも辟易している。厚生労働省のHPを注意深く見ると注射したからと言って感染を防ぐ臨床的な根拠はまだなく、「(注射には)感染症の発症を予防する高い効果があり、また、重症化を予防する効果が期待されています」という書き方をしている(https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0011.html)。「感染症の発症を予防」ということは感染しても発症しないという事であり、感染そのものの予防ではない。実際上記のサイトを見るとこの後に、「発症予防効果」「重症化予防効果」「感染を予防する効果」と説明が続いている。そしてこう書いてある「感染を完全に予防できる訳ではありません。ワクチン接種にかかわらず、適切な感染防止策を行う必要があります」。
 「感染を予防する効果」については、要するに予防しそうではあるが、社会的なデータしかなくて科学的なデータ(臨床データ)がないので断言できないという意味のことを表記している。厚生労働省がこういった情報を開示しているのは自己責任で注射を打つに当たり、嘘偽りのない材料を提供してくれているに等しく好感が持てるものである。

 しかしながら、TVに代表されるマスコミはいかにも注射に「感染を予防する効果」があるような言い方をして全国民の洗脳に走っている。「注意深く見ていると嘘はついていない」という反論もあるかもしれないが、では何故「ブレイクスルー感染」などという言葉を使っているのか。そもそも感染予防効果を謡っていないのだから「ブレイクスルー(突破)」ではない。それをこの言葉を使うことによって、裏の意味として感染予防効果を吹き込んでいる。
 注射の感染予防効果というデマが蔓延し、国民の大多数が洗脳されているのが我が国の惨状である。これに比べると全く取るに足りないことではあるが、クローンコエの交配種説のようにカランコエの世界にもデマはある。今回の話題はその一例である。


 さてさて、K. rosea 同様にDescoings(2003)が保留扱いにした知られざるカランコエにKalanchoe carneaがある。と聞いておや?と思った人はなかなかの通で、このサイトかそれを情報源としたHPを見たのかもしれない。
ここではKalanchoe carnea 'Modoc'として扱っている。'Modoc'というのはこのページの説明によると「サンタバーバラのモドックロードにちなむ考えられているが、本当の由来は不明(ここは意訳)」となっており、アメリカ人が勝手につけた名である。そしてある大御所の情報でこれがK. roseaのシノニムであるとしている。
 私はこのカランコエがK. rosea とは到底思えず、N.E.Brownの原記載(Gardeners' Chronicle:1886)を持ち出してSNS上でこれに異議を唱えた。原記載にはあろう事か産地がネパールだかケープだかというように書いてあるが、これに続く1887年の同誌には南アフリカ産と記されている。私の指摘に対し大御所は、Brownは(K. carneaが)南アフリカ産かネパール産と言っているが、Toelken (1985)は南アフリカにこんな種はないとしている。ネパールは(K. roseaの産地の)アッサムに近く、両者ともピンクの芳香のある花を咲かせる。アジアでそんな花はK. roseaだけである。そしてK. carneaの方が古い名である(よって、こちらに先取権があり、K. roseaはシノニムとなるという意味)。と三段論法的に切り返してきた。彼がそう考えるのは良いが、消去法の推論に過ぎない。

Kalanchoe carneaの原記載(Gardeners' Chronicle:1886)と1887年の紹介記事
K.carnea OD.jpg
K.carnea Fig.jpg


 そのあと原記載の図やら今回紹介した論文にも載っているメガラヤ州で見つかった薄いピンク色の花のカランコエについてのやり取りがあって、私は「結局決定的な証拠は何もないのだね」で終わろうとした。しかし大御所は、「決定的な証拠がある。タイプ標本を比べてみろ、両者は同じ種だ」と断言した。私もあとに引けないので、両種のタイプ標本を探したがK. carneaしか見つからなかった。その1年後に今回の論文が出てK. roseaのタイプ標本は存在してないことが分かったのだが、その時はふたりとも知らなかったのだ。

Kalanchoe carneaのタイプ(模式標本)
710534 K.carnea Type.jpg
無題.png

 果たしてK. carneaのタイプ標本を見た私はちょっとした敗北感を感じた。本物のK. carneaは上記サイトの'Modoc'とは似ても似つかずGardeners' Chronicleの挿絵とも違う、K. roseaによく似た植物だった。しかしながらタイプ標本のラベルにはN.E.Brownの署名入りで”from S. Africa”と記されていた。私は落としどころとして、ラベルは南アフリカだけどToelken (1985)は南アフリカにこの種はないとしている(確かに最新の知見でも該当種はない)、従ってK. carneaの産地は不明と提案した。そしてあなたの言うようにK. roseaに似ているが、'Modoc'には似ていないと締めくくった。引き分けに持ち込もうと思ったのだ。元々'Modoc'がK. roseaではないというのが私の主張であって、'Modoc'がK. carneaでもなかったというのは想定外の副産物だったのだ。そして最後に大御所曰く、You are making me nervous with thoroughness.


 現時点で振り返るとやはりK. carneaはアジアの種だったのかもしれない。既知の種のどれかなのかは分からない。そして'Modoc'はエチオピアのK. petitianaか何かなのではないか、ハーフウェイ・マニアにはまだ分からないことだらけである。

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