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聖地巡礼;珊瑚石灰岩の匙葉と枝角葉 [others]

 このブログではよくあることだが、初回に細かいことを書かなかったので少し補足したい。
かねてより台湾のカランコエ自生地を見たいという願望があったが、思っているだけではいつまでも叶わないので実現に向けて一歩踏み出すことにした。そこで台湾南部へ行けばよさそうだということで、高雄行の航空券探しから始めた。しかし良い時間帯がなくて、金曜夜遅くに高雄に着き、土・日に南部へ向かい探索して、月曜朝一の便で帰国という忙しい旅になった。

ということでガランビトウロウソウ探索の翌日は、リュウキュウベンケイソウK. spathulataを求めて低山へ登った。ここも山肌に石灰岩が見られ、林道脇や森の中に何ヶ所かのリュウキュウベンケイソウの群落を見つけた。沖縄のものとはだいぶ異なる形態で、かといって大陸で一般的に見られるものとも違う。葉が大型で披針形のタイプである。多くの群落でまわりの他の植物に比べカタツムリによる食害がひどい。カタツムリたちにとってリュウキュウベンケイソウは美味しいのだろうか。またはカルシウムを多く含むのか、興味深い現象であった。
 リュウキュウベンケイソウは他のカランコエと違って岩肌ではなく、林床に生えているため発見するのは難しかった。更に難しいのは、種内の形態差が甚だしく台湾国内でもいくつかのタイプが見られるということだ。つまり、探している場所のリュウキュウベンケイソウがどのような形をしているか分からないのだ。しかも特に目立って多肉なわけでもないので、尚更であった。

林床のリュウキュウベンケイソウK. spathulata群落IMG_8028.JPG

この個体群は葉が大型になるIMG_8002.JPG


 さて、残る1種のヒメトウロウソウK. ceratophyllaは他種よりも北部に戻りつつ探した。これも3ヶ所で見られたが、多少の形態的差異はあるものの地域による差異の傾向までは把握できなかった。ヒメトウロウソウはガランビトウロウソウ同様に岩場に着生して自生している。ここで花序を伸ばして背が高くなりすぎると、自重で倒れて下方に落ち、分布が広がっていくようだ。

岩肌に着生するヒメトウロウソウK. ceratophyllaIMG_8214.JPGIMG_8226.JPG

細葉のものと広葉のものが見られるIMG_8108.JPGIMG_8213.JPG



 台湾のヒメトウロウソウはKalanchoe gracilisの名で記載され、現在はこれをK. ceratophyllaのシノニムとしているが、詳細な分類学的研究が行われたのか疑わしく、実のところステイタス不明としたいところだ。私が栽培しているヒメトウロウソウはタイ産と言われ、確かに今回見た台湾のものとはかなり違うのであるが。。。
 台湾国内のものを見ても細葉linerとやや広い葉のものがあり、更にweb上ではリュウキュウベンケイソウのような、またはK. laciniataのような3裂の欠刻葉の植物がK. gracilisとして載っている。これがヒメトウロウソウなのかリュウキュウベンケイソウなのか、どちらだとしてもガランビトウロウソウを含めて台湾国内のリュウキュウベンケイソウ種群が形態的に分化していることは大変面白い。

 ヒメトウロウソウにも欠刻葉にならない個体が出たり、ガランビトウロウソウに欠刻葉があったり、リュウキュウベンケイソウの形態が多岐に渡るなど植物の形態形質(表現型)と遺伝子の関係を含め、アジアのカランコエを総括する研究が進むことを切に願いたい。

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