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子宝草/クローンコエの真実を求めて(前編) [taxonomy]

 またクローンコエの話しか、と呆れられそうだが私的なブログなので御了承頂きたい。なお、「真実」truthというのは意識を持つものが認識した数だけあるので事実factとは違うのだが、ここで求めた真実は事実の積み重ねに基づいた私なりの結論である。
 さて以前当ブログでは巷のクローンコエ神話を崩壊させたのだが、今回は更に歩を進めてクローンコエのルーツに迫ってみた。(参照:クローンコエ ~神話の崩壊~ https://kalanchoideae.blog.so-net.ne.jp/2017-10-14)若干補正しました。
 過去の記事の繰り返しになるがクローンコエ(子宝草)はマダガスカルで発見された植物で、1997年にDescoingsがKalanchoe laetivirensの名で新種記載した。これがシコロベンケイKalanchoe daigremontiana とラクシフローラKalanchoe laxifloraの交配種であるとか、Kalanchoe  ‘Crenodaigremontiana’または‘Crenatodaigremontiana’という「名前」であるとかいうのはS. Jankalski氏が流布したデタラメである。彼の文献的知識は素晴らしいが、同定能力はそこそこ低い部類で思い込みも激しい(ネット上で直接意見交換して得た私の個人的な評価です、この問題も問い詰められて逃げ出しています)。

 さて、原記載論文(Descoings, 1997)によるとクローンコエのタイプ標本の採集地はマダガスカル南西部のトリアラToliara (Tulear)からSaint Augustineへ向かうロードサイドで、その個体は近くのロッジLa Mangroveの庭から逃げ出してきたものだという。
 さらにそのロッジの植物はトリアラ郊外の施設樹木園L'Arboretum d'Antsokayから入手したもので、Arboretumの設立者Hermann Petignat氏からの情報によると、彼はこの植物をサザンクロス街道沿いにあるイサルIsalo国立公園の砂岩山塊の入り口で見つけた。というようなことが書かれている。

 今一度整理してみると、
① もともとはイサルIsalo国立公園の砂岩山塊の入り口で発見
② それを採集してトリアラToliaraのL'Arboretum d'Antsokayで栽培
③ さらにそこからSaint Augustineのロッジへ頒布された
④ それを欧州人が「発見」して新種記載
という経緯でクローンコエは世に知られることとなった。

 シコロベンケイもラクシフローラも自生していないイサルの砂岩山塊の入り口辺りに自生しているということは、両種の交配種などではないという裏付けのひとつである。もっともどこか別の場所で見付けたり作ったりした交配種を、その場所にバラまきに行った者がいるのではないかと屁理屈を言う人もいるかもしれない。が、確率は非常に低いだろう。
 ましてシコロベンケイ×ラクシフローラの交配からクローンコエのような植物は出来ない。以前に紹介したResende & Viana(1965)の論文でも明らかに違う植物であったし、日本のある研究の一環として作出した交配種の写真も見たことがあるが、本当に両種の中間といった外見でクローンコエとは全く違う。

参考写真:シコロベンケイ交配種
fed x daigreIMG_8551.JPG 

さて、先にクローンコエの出自に関わるIsalo、Toliara、Saint Augustineという3つの地名が出てきた。そこに行けば本当にクローンコエがあるのだろうか。
 その辺の事情は次回改めて書いてみたい。

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