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人名由来のKalanchoe [others]

 カランコエ属には人名に因んだ名前が多い。属全体で150種程度の種が知られているとして、そのうち約60種が人名由来なので40%を占めている。こういう導入を書くと、読んだ人は素直にこのことをインプリンティングされてしまうかもしれない。
 でもちょっと待って欲しい。実は種数は正しいとして、果たしてこの割合が他の植物の属に比べて多いのか少ないのか、または平均的なのか、まったく調べずに上の文章を書いている。私の扱ってきた多くの動物群に比べると感覚的には高い比率に感じるが、植物でも高いのかは分からないのだ。
またある動物の属では1属2種しか知られていなくて、そのうち1種が人名由来で比率50%という例もある。となると40%で60種というのと、50%で1種ということを単純に比率で比べても無意味である。数字は嘘をつかなくても、数字の使い方に騙されるというようなことは世に満ち溢れている。くれぐれも気をつけたいものだ。

というわけでもないが、今回はカランコエ属に多い人名の付いた名に着目してみた。何の解説もなく「人名由来の名」と言っているが、これは学名における人名由来の事を指している。皆様ご存知のように学名は属名+種小名で成り立っている。
例えば、
Kalanchoe fedtschenkoi
というのはKalanchoe属のfedtschenkoi種を表している。この種小名の末尾が―(i)iとか―aeとか―ormとなっているのが人名由来の名である。一般的には―i、女性の場合には―a(e)、複数の人(夫婦・親子など)は―ormとなる。(もっと細かなルールがあるが、割愛する。)
 よく誤解されているが、この名前を付けるのは新種記載論文を書く分類学者(等)であって、発見者ではない。なので新種を発見した人間が「俺の名前を付ける」などと言っても無意味である。ただ分類学者が発見者に因んで付けたりすることも多く、発見者の名が付いた動植物が存在する。カランコエの例はあまり知らないが、例えばKalanchoe ×richaudii などである。

 変わったところでは花ものカランコエの原種であるKalanchoe blossfeldianaは、通常「(ドイツの)ブロスフェルト商会の」と訳されるが、もともとblossfeldがRobert Blossfeldの名なのでこれも人名由来と言ってよい。
また下垂型の花が美しいKalanchoe rolandi-bonapartei は、かのナポレオンNapoleón Bonaparteに由来していると勘違いされそうだが、実際はフランス植物学会の会長も務めたことがある博物学者のロラン・ボナパルトRoland Napoléon Bonaparteに由来しているので気をつけたい。
 その他植物学者に因んだ名は多々ある。Kalanchoe bergeri、Kalanchoe beauverdii、Kalanchoe dinklagei、Kalanchoe gastonis-bonnieri、Kalanchoe manginii、Kalanchoe rosei、Kalanchoe waldheimiiなどである。

 植物学者ということでは、以前書いたことがあるがW. Rauhの名を冠したKalanchoe “rauhii”という学名はないので注意したい。新種記載されていないので有効な名ではないのだ。それとカランコエと言えば外せないHametやRaadtsの名を冠したカランコエがないのは寂しい限りである。

カンヌのリショー氏の名を取ったKalanchoe ×richaudii
“Rauhii”と勘違いされることがある
05x richaudiiIMG_7681.JPG

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