SSブログ

カランコエ・スパチュラータと8つの変種 [taxonomy]

 日本国内に自生する(していた?)唯一のカランコエ属の植物がリュウキュウベンケイソウで、その学名がKalanchoe spathulataである。以前はこれをKalanchoe integraとしていたが、黄花のリュウキュウベンケイソウに対してこちらは赤花が咲く別種であると分かり、更にそれがKalanchoe deficiensのシノニムであるとされた(Ohba, 2003)。このことは以前の記事でも書いているが、改めて述べておきたい。
 そのK. spathulataはインド・ネパールから沖縄にかけて広範囲に分布しており、当然変異は多い。沖縄のものに限っても学名の通り匙状葉のものとやや巾広の葉のものがある。国外では下の写真のようなものが一般的で、更に3裂の欠刻葉になるものも少なからず見られるようだ。台湾だけでも以前台湾のカランコエ記事で書いた様に3タイプが見られる。

一般的に見られるカランコエ・スパチュラータKalanchoe spathulata
spathulata var. spathulataIMG_5096.JPG

葉が3列の欠刻葉となるタイプKalanchoe spathulata
lobed spathulataIMG_7609.JPG 

 そしてここが面白いというか難しいのだが、これらの変異を少し逸脱したものがK. spathulataの分布域内、あるいはその周辺で見られ別種として記載されていた。それらの多くをOhba(2003)はK. spathulataの変種と位置付けた。この論文によりKalanchoe ceratophylla 以外の黄花のアジア産カランコエの殆どがK. spathulataに内包された。但しここでK. spathulata の変種にされたK. spathulata var. dixonianaはDescoings(2003)によれば白花であるという(Ohbaの論文にはこの変種の花色の記載が見つからなかった)。
 各変種とその産地は以下のとおりである。
変種名    分布
K. spathulata var. annamica ベトナム・ラオス・中国雲南省
K. spathulata var. baguioensis フィリピン(ルソン島)
K. spathulata var. dixoniana タイ
K. spathulata var. garambiensis 台湾南部
K. spathulata var. schumacheri インドネシア(ジャワ島)
K. spathulata var. simlensis インド(ヒマチャル・プラデシュ)
K. spathulata var. staintonii インド(シッキム、アッサム他)・ネパール・ブータン
K. spathulata var. spathulata 上記以外の分布域

 このうちガランビトウロウソウK. spathulata var. garambiensisは以前述べたように小型種で、紅葉?した葉裏の紫色が非常に美しい。その他は大体似たような植物なのか調べ切れてはいないが、Ohba(2003)によるとこのK. spathulata種群は他にK. ceratophyllaとK. roseaの2種が含まれている。K. ceratophyllはヒメトウロウソウの和名で知られる3~5裂の欠刻葉となる植物で、K. spathulata同様花色は黄色い。K. roseaはインドのアッサム州で見つかった淡いピンクやオレンジの花が咲く種である。
 その他のアジアの種とK. spathulata種群の違いについては同論文からは分からず、その点が気になるところである。

葉裏の美しいガランビトウロウソウK. spathulata var. garambiensis

garambiensisIMG_7415.JPG

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。