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Shaw(2008)の陥穽③ [taxonomy]

 今回は前回のクローンコエに先んじて載っている不死鳥類Kalanchoe ×houghtoniiについて見ていきたい。これはキンチョウKalanchoe delagoensis×シコロベンケイKalanchoe daigremontianaの交配種である。

□Kalanchoe ×houghtonii
 この不死鳥の仲間の記述については以前この論文を拠り所としていたとき、読み込むほどに大混乱に陥ってしまった。
 ここでの拾い物はそれまで俗称しかなかった(Bryophyllum tubimontanumとかHoughton’s Hybrid、Hybridaなど)この交配種がフロリダに帰化している個体を元に2006年に新種記載されたと知った事である(Ward, 2006)。
 もうひとつ有意義だったのはキンチョウ×シコロベンケイの交配種には2系統あるという情報だ。子宝草目録3-③で述べたように稔性のない3倍体と稔性のある4倍体である。これは認識しておくべき点である。ShawはKalanchoe ×houghtoniiの品種分けとして4倍体は葉の表側に斑のないフロリダのKalanchoe ×houghtoniiともう1タイプJT Baldwinを上げており、3倍体としては葉の表側に斑のある不死鳥とJaws of Lifeを上げている。しかし少なくともKalanchoe ×houghtoniiとJaws of Lifeに形態差はない。Jaws of Lifeの葉の表に斑はなく、どちらも植物のサイズからして4倍体と思われるが、稔性については個人的に確認していない。なので、いかにも違いがある風なことを書いてこのような分け方をされると混乱してしまう。

 更にKalanchoe ×houghtoniiの品種として以下の7つを上げている(記述順、‘ ’は省略)。
① Fujicho
② Hybrida
③ Jaws of Life
④ JT Baldwin
⑤ Parsel Tongue
⑥ Pink Butterflies
⑦ Pink Teeth
 このうち①⑥⑦は同じもので、不死鳥錦に相当する。これを別々に扱っていることで先ず混乱する。②はノーマルの不死鳥でこれら2品種が3倍体に相当する。
 Shawの見解とは違って③④は共にフロリダのKalanchoe ×houghtoniiと同じタイプの植物で、多分ここでいう4倍体相当種である。J.T. BaldwinというのはHoughtonの作出したキンチョウ×シコロベンケイの雑種について1949年に論文を出した人の名である。Baldwin自身はこの論文でHoughtonの交配種は3倍体であるとしているので、不死鳥タイプが3倍体、×houghtoniiタイプが4倍体と言い切ってしまうのは危険かもしれない。またShawはおそらくこの論文の図を見てこれがフロリダのKalanchoe ×houghtoniiと同タイプとしているが、私にはそれがJaws of Lifeとどう違うのか分からない。そもそもこの図はHoughtonの作出した交配種を描いたものなので、どうしてそれにJT Baldwinと名付けたのか理解困難である。

最後に⑤のParsel Tongueは以前に子宝草目録3-④で紹介したようにKalanchoe ×houghtoniiタイプの植物ではなく、細葉のシコロベンケイタイプなので、これは分ける必要がある。但しShawの記述はISIの提示している極端に多肉化した個体を元にしており、やや違和感を覚える。

 以上のようにShawはKalanchoe ×houghtoniiに加えて7品種を紹介しているが、実際は×houghtoniiタイプ、不死鳥タイプ、Parsel Tongueの3タイプである。しかもParsel TongueはKalanchoe ×houghtoniiとは言えないので、キンチョウ×シコロベンケイの交配種は2タイプに分けられるというのが実際のところだ。更に子宝草目録3-③で述べた第3のタイプや子宝草目録5で紹介したものもあるので、留意しておきたい。

Jaws of Life:葉の表に斑なし
Jaws of LifeIMG_4291.JPG 
不死鳥錦Pink Butterflies:葉の表に斑あり
不死鳥錦P5180021.JPG 

タグ:不死鳥
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