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仙女の舞/ベハレンシス(後篇) [taxonomy]

 前回はえらく中途半端なところで止めてしまったが、ベハレンシスには2~3の変種(とみなされる程度の変異型)が知られる。しかし、どのタイプが基変種なのかいまひとつ不明確であるからして、以下は一マニア(もどき)の無責任なたわごとと思って頂きたい。
K. beharensis var. aureo-aeneusの葉は美しいゴールデン・ブロンズもしくはブラウンのベルベットのような毛並みの種で、老成すると灰白色になるらしい。ということはこれがよくオシャレ系の店にある葉縁の切れ込みのないタイプかもしれない。そうすると植物園でよく見かける葉に切れ込みがあるタイプのものが、基変種なのだろう。
 一方、K. beharensis var. subnudaの葉は無毛で、一目瞭然である。これもごく小さいうちは葉に毛があり、ある程度の大きさになっても若い芽が有毛である場合がある。国内では艶葉仙女の舞とかベハレンシス・ヌーダと呼ばれている。

 他のカランコエとの交配種(ローズリーフ、ファーンリーフ、ファングなど)は除いて、原種のベハレンシスだけに話を絞ると、この変種を中心に考えるよりタイプ別に整理した方が良さそうだ。タイプ別というのは必ずしも分類学的に分けられるものという意味ではなく、見た目の違うものといった程度の意味である。
 参考に湯浅浩史先生の「マダガスカル異端植物紀行」(1995, 日経サイエンス社)から次の一文を引用してみる。
-----引用始め「同属同所混在」の項より------
同種内で明らかな形態分化を生じているにもかかわらず、同所に混在する種類もある。カランコエ・ベハレンシス(仙女の舞)は有毛で葉の縁が波打つタイプと、無毛で表面が粉を帯び、葉の縁が波打たないタイプが、南部の乾燥地で、しばしば入り混じって生えている。すみわけでも共生でもない同所性。それを解くことが種分化の一つのカギとなろう。
-----引用終り-----

 つまり大まかに言って有毛なものと無毛なもの、葉縁が切れ込んで波打つものとそれが余りないもの、これに葉が長いものを加えると大体のタイプが揃う。これらのタイプが固定されたものか、環境要因によるものか、若干の育種の結果なのかは分からないが、植物園やネット上で見かけたものを表にまとめてみた。

beharensis types.png
 この表のうち、有毛灰色で切れ込みなしのものがK. beharensis var. aureo-aeneusではないかと思うもので、無毛のものがK. beharensis var. subnudaである。subnudaの葉縁の形状はどちらなのかは分からない。両方とも同じ変種と言えるのかもしれない。それは有毛茶色のタイプの切れ込みの深浅についても言える。
 これらとちょっと異なるのが長葉のタイプだ。一部のマニアの間でstoloniferousと呼ばれるタイプだが、これも切れ込みのあるものと無いものがあり、その2者の違いは変種や品種レベルの分類学的な相違といえるのか分からない。
分からないことだらけだが、いずれのタイプも見ごたえのある魅力的な植物だと思う。私のところではかつてヌーダを2mの高さまで育てたが、冬に水をやり過ぎて気付いたときには腰水状態になっていて、親株を駄目にしてしまった。以後冴えない事甚だしい。
 ヌーダは根上不定芽で根元から沢山芽が出てくるので、放っておくと鉢も根詰まりしてしまう。他の変種/タイプも同じなのかは分からないが、根元に子株のある状況はよく目にするから基本的に根上不定芽で増えるのだが、程度問題なのであろう。
 仙女の舞は他の木本性カランコエに比べれば成長は速い方であるが、草本性の種よりはかなりゆっくりと成長する。どこかのサイトかHPで見かけたのだが、多肉植物用の用土より普通の園芸用土に植えた方が成長が速いとの事。自分でも試してみて、実感はしているが実験はしていない。
 個人的にとても好きな植物だが、流石に大きくなり過ぎるので何種も並べておくわけにはいかない。残念だが場所に余裕のある人向けだと思う。

有毛(若いのでブラウンのベルベット)切れ込みなし
年数を経ると灰白色になるのだろうか?
B2_01.jpg 

有毛茶色で切れ込み浅いもの
B2_02.JPG 

有毛茶色で切れ込み深いもの(単に上記の若い状態かもしれない)
B2_03.JPG 

無毛で切れ込みなしのもの
B2_04.JPG 

submudaも小さいうちは有毛である
B2_05.JPG 

長葉は写真なし。いつかどこかで見かけたら撮ってきます。


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salt

本日、カランコエ マヤを検索していましたらこちらのブログを発見いたしました、すばらしいブログですね、昔カランコエを作ってまして、カランコエは懐かしいです、詳しくお話をお伺いしたいのですが、メルアドを教えていただければと思います、うちのHPの方にでご連絡いただくか、FBの方に友達申請いただいても良いかと思います、
by salt (2016-03-09 22:39) 

channa

saltさん、コメント頂きありがとうございます。

返事が遅くなり、すみません。
最近仕事に追われ、ブログを見ていなくて気付かずにいました。
FBはやっていないので、HPの方に連絡させて頂きます。

よろしくお願い致します。
by channa (2016-03-13 14:34) 

channa

saltさん、立て続けにすみません。

先ほど貴HPの問い合わせフォームからメッセージをお送りしましたが、そこに登録されている少なくともひとつのアドレスには届かなかったようです。もうひとつの登録アドレスの方にも届いていないようでしたら、御一報ください。
宜しくお願いします。
by channa (2016-03-13 15:07) 

salt

ご連絡ありがとうございます、難しいブログですから噛み応えがあります、こういうブログが増えると良いですね、今後の展開が楽しみです、HPのメルアドは確認してみます、いまだにHPは不完全であります、バラを集めるけれど、売る気がないのでしょうね、
by salt (2016-03-14 08:56) 

channa

saltさん、

メール有難うございます。
追々御返事致します。

このブログは書き方(文体)こそ偉そうですが、中身は素人のたわごとですから御笑覧下さい。
独りよがりの文章なので、分かりにくいという意味では「難しい」かもしれません。その点は御容赦下さい。

今後とも宜しくお願い致します。
by channa (2016-03-18 23:59) 

下海

初めまして。
園芸素人の私が雑貨屋の閉店セールで一目惚れして昨年仙女の舞を購入しました。どんどんと仙女の舞に興味が湧き、検索するとこちらを発見しました。仙女の舞1つにしても細かく分類されており奥が深いと感じており、また他の記事も遡りながら楽しく読ませてもらっています。
私自身仙女の舞を大きく丈夫に育てたいと思いながらも専門知識が無く、中々ネットにも育て方がのっておりません。管理人様は仙女の舞を育てる知識をどちらで学ばれましたか?もし差し支えなければお勧めの書籍等あれば教えて頂けないでしょうか?よろしくお願い致します。
by 下海 (2018-08-06 20:41) 

channa

下海さん、コメント有難うございます。

仙女の舞は何とも魅力的な植物ですよね。考えてみると中華な名前ですが、そんな雰囲気ではないのも面白く感じます。
仙女の舞のバリエーションの他に、交配種もあるのでこちらも御覧ください。

ベハレンシス・ストレイン
https://kalanchoideae.blog.so-net.ne.jp/2016-11-26
ベハレンシス・ストレイン PartⅡ
https://kalanchoideae.blog.so-net.ne.jp/2016-12-10
※一つ御注意頂きたいのは、ここで「ファーンリーフ」としていたものはやはり「オークリーフ」が正しいという情報を得ました。いつか記事で書きます。

さて、お尋ねの栽培法ですが、残念ながら私も園芸は素人でして栽培は手探りでいい加減です。特に仙女の舞のような丈夫な種は適当に栽培しているに過ぎません。書物やHPでも特にあてにしているものはなく、この記事の写真も私の植物はヌーダだけで、他は植物園等で撮影したものです。

拙いながら、いくつか気づいた点を挙げてみます。
・用土は草花の栽培用土に赤玉土を半分混ぜて、石灰を少々加えます。
・4~11月は戸外においてできるだけ日光に当てて下さい。
 (今年のような猛暑はずっと日に当ててよいかは分かりませんが。)
・耐陰性があるなどと書いてあるHPもありますが、信用しないで下さい。間もなく葉が丸まってきてしまいます。
・マダガスカル南部の乾燥地帯の植物なので、他のカランコエより根が張るようです。なので大きめの鉢に植えてあげましょう。
・水やりは一般的な多肉と同様で、土の表面が乾いて1、2日経ったらたっぷり与えます。
・一つの鉢に複数本植えないようにしましょう。せめぎ合って成長しなくなります。

ネットで検索するとき、「仙女の舞」だけでなく「ベハレンシス」や「Kalanchoe beharensis」等でも試してみてください。良い情報に当たるかもしれません。

また何かありましたら、遠慮なくコメントください。
by channa (2018-08-07 22:42) 

下海

channa様
アドバイスありがとうございます。
他のベバレンシスの記事も拝見させて頂きました。それぞれ表情が違い、どのベバレンシスも育てたくなりますね。まずは家にあるベバレンシスを見応えある物に育てたいと思います。これからもブログ楽しみに読ませて頂きますのでよろしくお願い致します。
by 下海 (2018-08-08 21:02) 

channa

下海 様

>どのベバレンシスも育てたくなりますね。
正にそういう欲望に負けて、実はこのあと何タイプか入手してしまいました。大きくなったら置き場に困り果てることが目に見えているのに、我ながら呆れます。

ブログの方は今後とも御覧頂けると嬉しいです。

by channa (2018-08-08 22:19) 

下海

channa様
私も置き場所に困るほど大きくしてみたいものです。
実は今私の仙女の舞が弱々しくなってきて困っております。
きっかけは強風で鉢が倒れてしまい、葉が大半傷ついてしまった事に始まりました。それ以降は室内にいれて窓際に置いたり週末のみ外に出していたのですが、新しく出てきた物を含む葉が一部変色したり、下の葉から落ちはじめたりと買った頃に比べると弱々しくなっているのを見て仙女の舞に申し訳ない気持ちでいっぱいになります。どうすれば元気を取り戻す事ができるでしょうか。
長文失礼しました。
by 下海 (2018-08-12 01:30) 

channa

下海様

質問有難うございます。
2chではないので、長文で具体的なことを書いてくれた方が良いです。

さて、
>新しく出てきた物を含む葉が一部変色したり、下の葉から落ちはじめたり
との事ですが、葉の変色は白いものが付いているならうどんこ病かもしれませんし、茶色い斑点なら黒星病や藻類の付着の可能性があります。
どちらも市販の薬剤を散布します。後者の場合病原体が死滅しても、変色した部分はそのままなので御了承ください。

それから株が弱っているということですが、光は重要なので気温が32~33℃以下なら戸外に出しておいた方が良いでしょう。窓際と外では光量が違います。下の葉が落ちてしまうのは、室内に入れたことが要因の一つと思われます。

以上、経験に基づくことを書きましたが、私も植物栽培は素人なので他の情報も当たってみて下さい。
by channa (2018-08-12 19:07) 

下海

channa様
ご返答ありがとうございます。
channa様のご厚意につい乗っかかってしまいあれこれ聞いてしまいました。申し訳ありません。これから色々調べて家の仙女の舞を元気にしてそのご報告ができたらと思います。ありがとうございました。

by 下海 (2018-08-13 06:33) 

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