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朱蓮と赫蓮 [taxonomy]

 似たような名のこの2種は共にアフリカ大陸に産するカランコエで、国内では以前から栽培されていたようであるが、良く混同されている。よく分からないのが朱蓮で、たまに引き合いに出す小学館の園芸植物大事典では、これをKalanchoe longiflora var. coccineaとしている。K. longifloraというのは、以前昔の本の紹介の記事で魔海(瑞蝶)とされている種で、その和名(か園芸名)の植物と学名が一致しているのかいないのか、今一つ確信が持てない。K. longiflora var. coccineaとなるとその変種になるわけだが、巷の朱蓮とK. longifloraはあまり似ていない。長い筒状で花弁の黄色い花が咲く点では一致しているが、赫蓮もK. paniculataも似たような花なので、これだけでは当てにならない。

 

 一方、赫蓮の方は身元が確かで、こちらは南アフリカ、ジンバブエ、モザンビーク原産のKalanchoe sexangularisである。K. longifloraに幾分似るが、花筒はK. longiflora 1114㎜に対して710㎜ほど(というがもっと長くなる事もある)。茎の断面が四角のK. longifloraに対して46角という違いがある。基準標本の個体が六角の茎だったのが種小名の由来らしい。

日本ではこの赫蓮の学名をK. longiflora var. coccineaと誤認しているケースが多々あるが、これはJacobsenA Handbook of succulent plantsLexicon of succulent plantsK. longiflora var. coccineaとして赫蓮の写真を載せているのが元凶というか原因であろう。花が良く似ているのも一因かもしれない。

 

 またDescoings(2003)のリストにK. longifloraの変種としてはK. longiflora var. coccineaの名はなく、困惑する。そこで改めてJacobsenの情報が役立ち、シノニムとして載せているK. petitianaの名で改めてDescoings(2003)を見ると、現在はこちらの名が生きていてK. longiflora var. coccineaはそのシノニムとなっている。それでは朱蓮はK. petitianaなのかというと、どうも花弁の色が気になる。Descoings(2003)の記載では薄い黄色か赤っぽいピンクとなっている。朱蓮は鮮やかな黄色の花なので、この種ではないのかもしれない。花色はGufodontis(1965)でも確認したが、やはり赤やピンクがかるようだ。ということは朱蓮の正体は結局分からず終いなのである。

 

これを読んだ人も書き手の自分も混乱しそうなので、最後にまとめたい。

    朱蓮と赫蓮は別種

    赫蓮はKalanchoe sexangularisでアフリカ南部原産。

    朱蓮はK. longiflora var. coccineaというのは誤認で、今のところ正体不明

    Jacobsenの著書のK. longiflora var. coccineaの写真は赫蓮の間違い

 こんなところだろうか。赫蓮は朱蓮よりも鋸歯が大きく顕著で、紅葉すると葉の表面・裏面ともに濃い赤色に色づく。朱蓮は紅葉すると葉の裏がきれいな赤色に染まるが、はの表は緑色などといった部分で見分けると容易だと思う。

 

赫蓮1.jpg

赫蓮 季節が良く紅葉していない状態、大ぶりの鋸歯があります

赫蓮2.jpg

紅葉すると葉の表も赤くなります、ほこりは気にしないで欲しいです

赫蓮3.jpg

良い写真がなかったけど、赫蓮の花

朱蓮1.jpg

若干色づいているけど通常の朱蓮、赫蓮に比べて鈍鋸歯です

朱蓮2.jpg

紅葉すると葉の裏側が赤くなります

朱蓮3.jpg

朱蓮の花、2種とも良く似てます 


タグ:赫蓮 朱蓮
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