胡蝶の舞の素性(後篇) [taxonomy]
先週載せた記事の続きです。
③ 和名が示す種
ではK. fedtschenkoiとK. laxifloraはどう見分けたらよいのであろうか。似たような外見のK.marnieriana(マルニエリアナ)等も含めて、Boiteauと Allorge-BoiteauのKalanchoe de Madagascar(1995)から該当部分の検索表を引用してみる。
-------引用はじめ----------
A. 花は比較的大きい;花筒の狭い部分で直径4mm以上
a.はっきりと起立する。葉縁は浅い鋸歯状か鈍鋸歯状、あるいは細かい鋸歯がある------------K. rosei
aa.根もとの茎から発根する。殆ど鈍鋸歯がない ---------- K.marnieriana
AA. 花は比較的細い;花筒の狭い部分で直径3mm以下
b.葉は茎の下方に多い。茎の根もとに明確に根が出る
+葉縁は上方だけに鈍鋸歯がある ------------ K. fedtschenkoi
++葉縁全体に鋸歯がある --------------- K. serrata
bb.葉は茎の中ほどに多い;根もとでの発根はあまりなく、茎は起立する
+葉は柄が短く大きい(長さ10㎝) ------------- K. waldheimii
++葉は柄が明確で、長さ4~5㎝以上にならない -------------- K. laxiflora
-------引用終わり----------
頑張って訳してみたものの、今ひとつ役に立たない。発根については異論もあるし。
記載文も含めてK. fedtschenkoiとK. laxifloraだけの区別点を改めてまとめると、K. fedtschenkoiの葉は葉柄が短く、鋸歯は葉の上部に多い。対してK. laxifloraの葉は葉柄が長く明確で、葉全体に鈍鋸歯があり、葉身の基部が上向し楯状葉のようになる。といったところである。実際は両種とも変異が多く、K. fedtschenkoiでも葉縁全体に鋸歯があったり、K. laxifloraでも変種や個体、若い葉などで葉縁の上向がなかったりで難しい場合もあるが、株全体の葉を見れば大体同定可能だろう。
もしかすると胡蝶の舞という和名を付けたとき、この2種を混同してしまったのかもしれない。和名の命名者が誰かは分からないが、胡蝶の舞錦(K. fedtschenkoi)が胡蝶の舞(K. laxiflora)の斑入りであると思い、この名を付けたのかもしれない。
前回①で述べたように別種の和名を胡蝶の舞と胡蝶の舞錦にした場合、現実的な混乱も生じる。斑入りのK. laxifloraは見た事がないので置いておくとして、斑入りでないK. fedtschenkoiは実際に「胡蝶の舞」の名で売られていることがあるわけだが、これは誤同定ということになってしまう。しかしそれでは和名で何と呼べばよいのか。胡蝶の舞モドキとかニセ胡蝶の舞とでもしたら良いのだろうか。
いちばん難しい問題は未解決のままである。
追記:K. fedtschenkoiはフェドチェンコイと表記されているのを目にするので、これに倣う事にする。学名の読み方は(私は)基本的にローマ字読みしているが、人名由来のものはそうもいかずに難しい。この学名も由来の人物はフェドチェンコなのかフェッシェンコなのか分かる方がいれば御教示願いたい次第である。(英語圏の人はフェッシェンコと発音しているようではある。)
各種の新芽の部分。どれも似たり寄ったりで、区別がつかない。
おまけに不明種まであるし、訳がわからんのであります。
各種の葉を比較すると、なんとなく分かります。
そして決め手はK. laxifloraの葉身基部の上向。同じ株でも全ての葉に見られるとは限りませんから、
注意して下さい。
不明種はK.tenuiflora辺りかと思い、確認したいけど文献が入手できんままです。
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