カランコエとブリオフィルム③:トウロウソウ節について [systematics]
植物の分類では属の下位に亜属subgenus、節sectionといった分類単位を設けている。正直なところ、BryophyllumやKitchingiaが亜属であろうと節であろうと素人のカランコマニアを目指している私にはどちらでも同じようなものである。問題はそれぞれの亜属なり節なりの特徴がどんなもので、またどう見分ける(区別する)かである。
ところで亜属の下を植物分類学では「節」というようだが、園芸的にはこれを「節」と訳さず、そのまま「セクション」と言うのかもしれない。どこかでその表記を見かけた気がするが、どこか思いだせない。それでは亜属もサブ・ジーナスと言うのだろうか、しかし属は属と言っているので亜属の方が通りが良さそうだ。この辺がまだ門外漢の私には難しいところだが、本ブログではsectionを節と呼ぶことにしたい。
話を戻して、まずはBerger体系での特徴をChernetsskyy(2011)からの孫引きで見てみる。
-------引用はじめ----------
(Bergerは)3属を花の特徴とBryophyllumにおける不定芽の形成で区別した。主な判別基準は、萼と花冠筒部の形状・雄蕊の花糸と花弁の異類合着部位・子房長の花柱に対する割合・花の配列(直立か下垂か)・花序の形である。
--------引用終わり-----------
これでは形質の差異がある点は分かるが、具体的な判別については分からない。そこで安直ではあるが上記を基にして小学館の園芸植物大辞典から各節の区別点を拾ってみたい。
まず前提としてカランコエ属の花弁は4枚で雄蕊は8本、花弁が合着して花冠は筒状になり、萼片もたいてい合着して萼が筒状になっている。(時々5枚の花弁を持つ花が咲くことがあるが、これはあくまで奇形であってその個体のごく一部の花に限られる)このことを念頭に置いて園芸植物大辞典を見ると、
①萼と花冠筒部の形状
Kalanchoe 萼は深裂するか筒状、花冠は舷部(花弁の先の方)で開出
Bryophyllum 萼は半分以上合着し花冠(花筒)を半分以上覆う、花冠は真直ぐか舷部でやや開く
Kitchingia 萼は花冠より極めて小さく深裂する、花冠は裂片が短い
②雄蕊の花糸と花弁の異類合着部位
Kalanchoe 花糸は花冠の中ほど、または上部に着く
Bryophyllum 花糸は花冠の基部に着く
Kitchingia 花糸は花冠の中ほど、または上部に着く
③子房長の花柱に対する割合
特に言及なし
④花の配列
Kalanchoe 直立
Bryophyllum 下垂
Kitchingia 基本的に下垂
⑤花序の形
Kalanchoe 散房状または円錐状の集散花序
Bryophyllum 記載なし
Kitchingia 散房状または円錐状の集散花序
⑥その他
Kalanchoe 不定芽は葉にできない、花序にも普通できない
Bryophyllum 多くの種で不定芽が葉にできる
Kitchingia 不定芽は葉にできないが、花序に形成される
という具合である。
実際問題としてはこれらの特徴を見て複合的に判断するしかないだろう。それぞれ例外がありそうだ。葉をちぎって土の上に於いておき、不定芽が葉縁から出ればBryophyllumとも言えるが、全ての種に当てはまるわけではない。乱暴な見方をすると、ヨングマンシィを除いて下垂する花ならBryophyllumかKitchingia、そして萼が大きければBryophyllumと覚えておけばよい。これだと花が咲かない事には区別できないのではあるが。
この問題は大体分かれば良いだろう。少し疲れたのでKalanchoeとBryophyllum の2節に分けた場合は、Kitchingiaに含まれる種がどう振り分けられるのかとかは暫く考えない事にしたい。
ちなみにそれぞれの節の和名はリュウキュウベンケイ(Kalanchoe)、トウロウソウ(Bryophyllum)、マダガスカルベンケイ(Kitchingia)となる。
そうするとこれは、
マダガスカルベンケイKitchingiaになるのですね(というのは皮肉っただけで、これはBryophyllum)
そしてこれは、
トウロウソウBryophyllumということですね...