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唐印の学名 [taxonomy]

 唐印は1950年代に輸入され、以来多肉植物として愛好されてきた。近年は町の花屋さんでも時おり見かけるようになったが、最近になって近年出回っている赤みの強い葉のものは、以前から栽培されてきた唐印とは別種であると言われるようになった。

 結論から言うと以前からの唐印はKalanchoe thyrsiflora、近年の唐印はKalanchoe luciaeである。別種なのに和名(実際は園芸名?)が同じで、しかも良く似た種であると混乱を招くので、K. thyrsifloraを唐印、K. luciaeを紅唐印(唐印錦もこの種)と呼べばいいかと思う。

 異論のある方もいるかと思うが、古い(といっても1970年代)多肉植物の書籍を見ると唐印としているのは写真や記述からK. thyrsifloraのことであって、K. luciaeを誤認したものではない。今も参考にされているであろうNHK出版の「サボテン・多肉植物 ポケット事典」で唐印(K. thyrsiflora)として紹介されている種は写真もK. thyrsiflora のようであり、誤用ではない。昔から唐印がK. thyrsifloraの和名として使われていたようなので、そのまま継続するのが自然である。和名の利点はある種の研究が進んで、学名が変更になった場合でも和名はそのまま残して使える点にある。唐印の場合は、別種が巷で同じ名前で呼ばれるようになったからといって、和名を別種に移行する必要はない。

但し、分類学上は以上の様な不文律があるが園芸上はどうなのか、その点は良く知らないので園芸の世界では独りよがりな考えかもしれない。

 

さて、紅唐印K. luciaeは近年になって普及したようで、デザートローズという名で売られていることもある。紅葉していない株は唐印に良く似ており、判別が難しい。両者はどのような違いがあるのであろうか。Eggli(2003) Illustrated Handbook of Succulent Plants: CrassulaceaeTolken(1985) Flora of southern Africaから判別できる形質を調べてみたが、どうも最終的には花が咲かない事には絶対的な区別は難しそうである(特に片方のみ手元にある場合)。

 唐印は花冠筒部が(つまり花の長さが)1216(最大20mmあり、花弁は濃い黄色である。一方、紅唐印は花冠筒部が610(最大12mmで、花弁は黄色がかった緑というか白っぽい。紅唐印にはスワジランドとその周辺に分布する別亜種montanaがあり、基亜種に比べて小型で有毛という特徴を持つが、花弁はやや大きい。

 花がない葉だけの状態では、唐印は通常、茎が直立し(自生地では)1.5mの高さに育つのに対し、紅唐印は茎は直立することもあるが、枝分かれする事もあり(これも自生地では)2m程に育つ。両種とも葉柄のない全縁の丸い葉を持つが、紅唐印は葉が赤く染まるのに対し、唐印は葉縁が赤く色づく程度である。いずれにしても市販されているような小型の株を、紅葉していない状態で判別するのは困難であろう。あるいは両種とも栽培している人であれば、紅葉していない状態の個体であっても両種の形態的な微妙な形質を掌握しているかもしれない。

 本当はここで両種の判別法を示せれば良かったが、あいにくどちらも栽培していないのでよく分からないのだ。どういうわけか唐印類とは相性が悪くて、過去3回駄目にしてしまい今は敬遠というか自粛状態で当面入手予定はない。そのうち失敗しない栽培法をどこかで聞きかじってから、いずれ再挑戦しようとは思っている。

 

 ところで最近流通しているのは紅唐印や唐印錦ばかりで、唐印は見かけない気がするのだが業界内で絶滅危惧に陥っているのだろうか。

 

変わり葉唐印P1120047.jpg

駄目にしてしまった唐印の変わり葉。写真では分かりにくいが、葉縁だけが赤く色づく。


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